crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] CAST (CRISPR-associated transposons / CRISPR関連トランスポゾン)

 CASTシステムは、部位特異的トランスポゾンDNA挿入に、RNA誘導型ターゲティング・モジュールとしてCRISPR-Casシステムを採用している。その中でI型CASTは、ガイドRNAに結合したカスケード複合体とトランスポゾンタンパク質TniQ、TnsC、TnsABの協調作用に依存している。トランスポザーゼTnsABとATPアーゼTnsCの相互作用は、トランスポーズ活性に極めて重要であるが、その根底にある分子的な詳細はまだ解明されていない。

 チューリッヒ大学のMartin Jinek教授が率いる研究チームは今回、Peltigera membranacea cyanobiont のI-B型CASTシステムの構造基盤を明らかにした。

 TnsCおよびTnsABのC末端領域との複合体の構造をクライオ電顕法により再構成し、2025-03-21 10.18.55DNA および AMPPNP の存在下で TnsCが7量体リングを形成し、TnsABのC末端テールと相互作用(hook)することでTnsABをリクルートすることが明らかになった
[グラフィカルアブストラクト引用右図参照]

 In vitroの結合アッセイからは、V-K型CASTシステムとは対照的に、TnsABはTnsC四量体の分解を誘導することなく、TnsC四量体と排他的に相互作用することが示された。

 主要な構造的特徴の変異解析から、TnsCの多量体化によるリング形成とTnsB相互作用がin vivoでのトランスポゾン活性に重要であることが裏付けられた。

 これらの知見は、I型CAST システムにおける TnsC の機能を明らかにし、V型CASTとの機構の違いを浮き彫りにし、また、そのゲノム工学のツールとしての展開を促進するであろう。

[構造情報] 
EMD-50932 / PDB 9G0F  :PmcTnsC–dsDNA–AMPPNP
EMD-51458 / PDB 9GMZ  :PmcTnsC–dsDNA–AMPPNP–PmcTnsABhook)
EMD-50933:PmcTnsC–dsDNA–AMPPNP, stretched heptameric conformation
EMD-50934:PmcTnsC–dsDNA–AMPPNP, stretched octameric conformation

[出典] "Structural basis of TnsC oligomerization and transposase recruitment in type I-B CRISPR-associated transposons" Finocchio G [..] Jinek M. Nucleic Acids Res. 2025-03-18.  https://doi.org/10.1093/nar/gkaf149 [著者所属] U Zurich (Dept Biochemistry)
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