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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] ABE (アデニン塩基エディター/adenine base editor)

 ゲノム編集による治療効果を生体内で評価するには、動物モデルが不可欠である。一方で、マウスとヒトのゲノムの相違により、しばしば、従来のマウスモデルで検証したゲノム編集療法の臨床展開が実現しない。そのため、トランスレーショナルリサーチに、患者固有の変異を含むヒト化ゲノムセグメントを帯びたマウスモデルが求められている。

 中国の研究チームは今回まず、ヒトT17M変異(ロドプシン-c.C50T; p.T17M)を持つ75ヌクレオチドのDNAセグメントを組み込んだ常染色体顕性網膜色素変性症(autosomal dominant retinitis pigmentosa: adRP)のhT17Mノックインマウスモデルを樹立した。

 adRPマウスモデルでは、網膜電図(electroretinogram, ERG)の振幅が大幅に縮小し、網膜構造の破壊が見られた。その後、ABEとT17M変異を特異的に標的とするガイドRNA(sgRNA)をアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを介して投与したところ、RNAレベルで最大39.7%の修正率が達成され、網膜機能も大幅に改善された。

 本研究は、hT17MノックインマウスモデルがadRP患者の臨床的特徴を再現し、ABEを介した治療が治療効果を発揮することを示し、また、網膜の異常を対象とするCRISPR療法の可能性を示した。

[出典] "Correcting a patient-specific Rhodopsin mutation with adenine base editor in a mouse model" He X, Yan T, Song Z, Xiang L [..] Gu F. Mol Ther. 2025-03-20. https://doi.org/10.1016/j.ymthe.2025.03.021 [著者所属] Hunan Normal U, Wenzhou Medical U, Henan Eye Institute, Zhejiang Chinese Medical U, Hunan Guangxiu Hospital, Central South U, Hong Kong Polytechnic U, Jinan U
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