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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 Cas9やCas12をはじめとするRNAガイド型CRISPR-Casヌクレアーゼが、汎用性の高いゲノム工学ツールとして広く用いられている。多様なCRISPR-Casエフェクターの中でも、最近ファージゲノムにコードされるミニチュアV型エフェクターとして同定されたCRISPR-Casλ [*1] は、哺乳類や植物細胞におけるヌクレアーゼ活性を持つことから、ゲノム編集の有望な候補として浮上している。しかしながら、Casλファミリーの酵素の詳細な分子機構はまだ十分に解明されていない。

 本研究では、メタゲノム解析と系統樹解析により、Casλファミリーの酵素として、CRISPR-Casλ2が同定された。生化学的解析から、Casλ2の強固なdsDNA切断活性が明らかになり、生理的条件下で16-18-ntのガイドcrRNAが最適であり、Casλ1 (747 aa)で観察される切断パターンとは異なる非対称な付着末端を残すことが明らかになった。さらに、Casλ2が成熟crRNAのスペーサー長を決める 「分子定規 」として機能するユニークな方法で、RuvC活性部位を介して前駆体crRNAを成熟crRNAに処理することが示された。

 次に、4つの異なる機能状態のcrRNAとdsDNA標的との複合体、および1つの状態のプレcrRNAとの複合体におけるCasλ2の構造を、クライオ電顕法で再構成した。その結果、他のV型CRISPR-Casエフェクターとは異なり、REC2ドメインがRuvC活性部位内で基質DNAと直接相互作用し、標的DNAの切断を促進することが明らかになった。

 さらに、Casλ2とCasλ1およびCasΦ [*2] の構造比較から、ファージにコードされたV型CRISPR-Cas酵素の多様性と保存性が浮き彫りになった。

[出典] "Structural basis for target DNA cleavage and guide RNA processing by CRISPR-Casλ2" Nureki O, Omura S, Morinaga H, Hirano H, Itoh Y, Alfonse L, Ornstein A, Munoz G, Garrity A, Hoffman G, DiTommaso T, Yan W, Scott D, Maben Z. Research Square 2025-03-18 (preprint). https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-5481685/v1 [著者所属] 東大, Arbor Biotechnologies, Novartis Institutes for BioMedical Research
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