テキサス大学オースティン校とカリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームは今回、コンパクトな Cas12a内のRループ形成によって標的DNAの認識とヌクレアーゼ活性化が実現する構造基盤を明らかにすること目的として、クライオ電顕法により、野生型 Acidaminococcus sp. Cas12a R ループ中間体 [Figure 1参照]と dsDNA(標的鎖と非標的鎖)の RuvC 活性部位へのdsDNAの誘導 [Figure 4参照] に相当する構造を捉えた。
- Cas12a は、極めて柔軟な REC1 ドメインを介してDNAをスキャンし、PAM 配列を認識すると、局所的にdsDNAが融解し、5 bpの長さのシード配列からのRループの形成が始まる。Cas12a は、R ループ伸長中にガイド ターゲットの相補性をチェックし続け、R-ループのコンタクトが限定されていることで、不安定で簡単にリバースするR-ループが維持される。
- 16-bpのR-ループは、REC2 がドッキングして BH を介して RuvC が非標的鎖(NTS)に露出するのに十分な長さであり、20-bpのR-ループは、REC2 のドッキングを安定させ、NTSをRuvC活性部位全体に引き寄せて、効率的に切断する。
- NTSの切断によりREC2 が解放され、遠位 DNA がNUCドメインへと再配置される機会が提供される。REC2が再ドッキングして RECとNUCの2つのローブが近づくと、遠位 DNA は RuvC ドメインに向かって曲がり、RuvC のリッド(lid)が標的鎖(TS)に活性部位を露出させる。 TS 切断後、REC2 の柔軟性と RuvC lid のリセットが繰り返し発生し、トランス切断が起こることが予想される。 [Fig 5参照]
[構造情報]
- EMD-40441/ PDB 8SFH: WT Cas12a 5bp R-loop
- EMD-40442 / PDB 8SFI: WT Cas12a 8bp R-loop
- EMD-40443 / PDB 8SFJ: WT Cas12a 10bp R-loop
- EMD-40444 / PDB 8SFL: WT Cas12a 15bp R-loop
- EMD-40445 / PDB 8SFN: WT Cas12a 16bp R-loop
- EMD-40446 / PDB 8SFO: WT Cas12a 20bp R-loop
- EMD-40447 / PDB 8SFP: WT Cas12a with TS in the active site
- EMD-40449 / PDB 8SFQ: WT Cas12a with exposed active site
[関連crisp_bio記事]
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[出典] "Cas12a domain flexibility guides R-loop formation and forces RuvC resetting" Strohkendl I, Saha A, Moy C, Nguyen A-H, Ahsan M, Russell R, Palermo G, Taylor DW. Mol Cell 2024-07-01/07-25. https://doi.org/10.1016/j.molcel.2024.06.007 [著者所属] U Texas at Austin (Dept Molecular Biosciences, Dept Molecular Biosciences, Interdisciplinary Life Sciences Graduate Programs, Dept Chemistry, Center for Systems and Synthetic Biology, LIVESTRONG Cancer Institute), UC Riverside (Dept Bioengineering);グラフィカルアブストラクト
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