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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 老化はゲノム全体の DNA メチル化(DNA methylation: DNAm)の状況の変化に反映されることが、生物学的年齢を測るエピジェネティック・クロックepigenetic clock: EC)の基礎になっている。しかし、これらのエピジェネティック修飾がどのように制御され、老化プロセスに直接影響するかどうかはほとんどわかっていない。

 2025-03-26 17.31.54ドイツの研究チームが今回、CRISPRをベースとするエピゲノム・エディター(dCas9-DNMT3AとCRISPRoff*を利用して [Figure 1引用右図 A参照]、個々の加齢関連 CpG 部位のエピゲノム編集を加えた。
[*] dCas9-DNMT3A を介したエピゲノム編集はほとんどの領域で一時的であり、数日以内に失われることがよくあるが、CRISPRoffは、DNA の過剰メチル化の安定性を高める追加の Krüppel 関連ボックス (KRAB) ドメインが含まれていてより持続的なエピゲノム制御を可能にする。

 エピゲノム編集の結果、本来の標的の以外の遺伝子に影響するいわゆるバイスタンダー効果が、ゲノムワイドで、誘発されることでを見出した。この効果は再現性が高く、また、他の加齢関連領域で顕著であった。すなわち、DNAm の局所的な変化が、ゲノム全体の加齢シグネチャの応答につながる可能性のエビデンスが示された。

 加齢関連部位での 4C-seq
により、バイスタンダー修飾および他の加齢関連 CpG との相互作用が増加することも明らかにされた。

 さらに、加齢により高メチル化または低メチル化する 5 つのゲノム領域で、ヒト T 細胞および間葉系間質細胞において、多重エピジェネティック編集を加えた。標的メチル化は加齢とともに過剰メチル化される部位でより安定しているように見えたが、双方のアプローチは、暦年齢との相関が最も高い CpG でバイスタンダー修飾を誘発した。注目すべきことに、これらの効果は加齢とともにメチル化が増減する CpG で同時に観察された。

 今回の結果は、エピゲノム・エディターを利用することで、エピジェネティック老化ネットワークを広範囲に調整し、また、ECを調節可能なことを示している。

[出典] "Epigenetic editing at individual age-associated CpGs affects the genome-wide epigenetic aging landscape" Liesenfelder S [..] Wagner W. Nat Aging. 2025-03-24. https://doi.org/10.1038/s43587-025-00841-1 [著者所属]  RWTH Aachen University Medical School (Institute for Stem Cell Biology, Helmholtz-Institute for Biomedical Engineering, Interdisciplinary Centre for Clinical Research Aachen, Institute for Transfusion Medicine),  U Medical Center Göttingen (Institute of Pathology), Center for Integrated Oncology Aachen Bonn Cologne Düsseldorf
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