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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ阻害剤(PARPi)に対する耐性は、臨床診療において依然として大きな課題であり、PARPi耐性の根底にある分子メカニズムをより深く理解することが必要とされている。

 精華大学と山西医科大学の研究チームは今回、オラパリブを用いたゲノムワイドCRISPRaスクリーンを行った結果、用して、BRCA野生型MDA-MB-231細胞におけるPARPi治療反応の潜在的な調節因子のトップヒットとしてARL11(ADP-ribosylation factor-like GTPase 11)を得た。

 続く検証実験において、ARL11の過剰発現により、in vitro および in vivo の双方において、がん細胞の感受性が、複数の PARPi 薬および他の DNA 損傷剤に対する感受性が大幅に低下することが、確認された。

 また、ARL11がSTINGと相互作用して自然免疫応答を強化し、I型インターフェロンの誘導を介した正のフィードバックを形成し、その結果、ARL11の発現が亢進し、がん細胞のPARPi療法に対する耐性に寄与するメカニズムも同定された。ARL11はまた、主要な DNA 二本鎖修復タンパク質である RUVBL1 および RUVBL2 (RUVBL1/2) 複合体と相互作用し、DNA 相同組換え (HR) 修復を促進し、PARPi 誘発 DNA 二本鎖損傷を大幅に軽減することを見出した。

 さらに、TCGAデータベースの臨床サンプルのデータ分析により、乳がん患者では健康な対照群と比較して ARL11 および RUVBL1/2 の発現レベルが著しく上昇していることが明らかになった。

 これらの知見は、ARL11 および RUVBL1/2 が、乳がん細胞を PARPi 療法に感受性にするための有望な治療ターゲットである可能性があることを示唆している。

[出典] "Genome-wide CRISPR activation screen identifies ARL11 as a sensitivity determinant of PARP inhibitor therapy" Zhang T [..] Zheng H. Cancer Gene Ther 2025-03-23.
https://doi.org/10.1038/s41417-025-00893-w[著者所属] Tsinghua U (State Key Laboratory of Molecular Oncology and Center for Cancer Biology), Shanxi Medical U (SXMU-Tsinghua Collaborative Innovation Center for Frontier Medicine)
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