[注] ABE(アデニン塩基編集)
アーケア・ゲノム由来のUn1Cas12f1 (以下、Cas12f) は、そのコンパクトなサイズ (529 aa) から、Cas9やCas12fに対して、in vitro/in vivoいずれにおいても標的細胞への送達に有利である。一方で、編集効率が極めて低いことから、Cas12fやガイドRNA(crRNA)を改変することで効率を向上させる試みられてきたが [*1-3]、Cas9やCas12aのレベルに及ばなかった。
南方医科大学の研究チームが今回、ガイドRNA(crRNA)の環状化(circular guide RNA:cgRNA)[Fig. 1 参照] に相分離システム [Fig. 4 参照]を組み合わせることで、これまでにない効率向上を達成した。
Cas12fの遺伝子活性化効率は、cgRNAsを利用することで、野生型の直鎖状crRNAに対して、約 1.9~19.2 倍大幅に向上して。これに、相分離システムと組み合わせることで、遺伝子活性化効率がさらに約 2.3~3.9 倍向上した。
またcgRNA は、ABEの編集効率を向上させるとともに、その編集ウィンドウを約 1.2~2.5 倍狭め編集の正確さも高めた。
さらに重要なことに、cgRNAによるCas12f CRISPRaは、マウス肝臓における Cas12f 誘導遺伝子活性化効率を、野生型crRNAに対して3.3-19.3倍まで向上させた [Fig. 6 参照]。
[背景]
CRISPR-Casシステムの直鎖状ガイドRNAはCasタンパク質と比較して半減期が大幅に短いことから、遺伝子編集プロセスの効率に対しては抑制する因子になっている。一般に、直鎖状RNAに対して共有結合した閉ループ構造を特徴とする環状RNAは、エキソヌクレアーゼ分解に対する保護が強化され、安定性が向上する。RNA編集酵素のADAR [*4] については、ガイドRNA(リクルートRNA)を環状化することでRNA編集の効率と忠実度が大幅に向上することが、2022年にNature Biotechnology 誌から刊行された論文 [Katrekar D et al.;Yi Z & Qu L] で報告されている 。また、CRISPR/Cas9のコンテキストでは、環状ガイドRNAがin vitroおよび細菌での編集効率を向上させることが報告されている [*5]。同様に、CRISPR/Cas12a および CRISPR/Cas13d システムについても環状ガイドRNAによってDNAとRNAの編集効率が大幅に向上することが報告されている [*6]。さらに、プライム編集(PE)についても、pegRNAの一部を環状にすることで、編集効率が向上することが報告されている [*7]。
相分離システムについては、一般的に、転写因子とコアクチベーターが、液-液相分離を介して動的に区画化オルガネラを形成し、転写を制御する可能性が知られている。南方医科大学の研究チームと他の研究チームは、CRISPRaシステムにおいて、相分離がその効率を向上させる可能性があることを報告していた [*8, 9]。そのため、相分離ドメインFUSIDR(FUSタンパク質の天然変性領)をdCas12f-VPRと融合され、Cas12f-gRNA遺伝子活性化システムの効率をさらに高めることを試みた。
[*] Cas12f、ガイドRNA環状化, およびADARに関連するcrisp_bio記事
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- 2025-01-17 コンパクトなCas12f1のゲノム編集効率の向上と応用
- 2024-09-06 Un1Cas12f1への4重変異導入とsgRNAの最適化を経てコンパクトで高効率な塩基エディターを実現
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- 2022-12-25 Cas9のガイドRNAを環状にすることで、in vitro およびバクテリア細胞内での安定性が向上し、編集効率も向上
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- 2024-01-16 CRISPR-Cas12aと環状RNAをベースとするプライム・エディター (PE) によるヒト細胞塩基編集
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[出典] "Engineered circular guide RNAs enhance miniature CRISPR/Cas12f-based gene activation and adenine base editing" Zhang X, Li M [..] Lin Y, Rong Z. Nat Commun. 2025-03-28. https://doi.org/10.1038/s41467-025-58367-4 [著者所属] Southern Medical U (Cancer Research Institute, State Key Laboratory of Respiratory Disease, Dermatology Hospital, Dept Developmental Biology)
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