野生型のCas12aに対して、その標的範囲を広げ、遺伝子編集の特異性や効率を改善するために、いくつかのバリアントが作出されてきた。しかし、Cas12aの多くのオーソログの中から、特定の標的配列に最適なバリアントを選択することは依然として困難である。今回、中国の研究チームが、バリアント選択を支援することを目指して、24種類のCas12a バリアント* [論文Fig. 1参照] の標的編集活性を測定し、ディープラーニング・モデルによる標的編集活性予測を実現した。
[*] AsCas12a, LbCas12a, FnCas12a, Lb2Cas12a, CeCas12a, EbCas12a, enAsCas12a-HF1, AsCas12a Ultra, HyperLbCas12a, AsCas12aRR51, AsCas12aRVR51, AsCas12a-Plus, HyperFi-AsCas12a, LbCas12aRR52, LbCas12aRVR52, LbCas12aRVRR52, LbCas12a-Plus49, LbCas12aK538R, iCas12as (mut2C-Wとmut2C-WF), eaFnCas12a53, FnCas12aRVR54, Lb2Cas12aK518R42, enEbCas12a
数千の標的配列を対象として、特定の PAM との互換性を評価するハイスループット解析を実行し、そのデータをベースにCNN(畳み込みニューラルネットワーク)を利用して、一連のCas12a バリアントのディープラーニング・モデルを開発し、対象の標的配列での遺伝子編集活性を予測した [論文Fig. 4参照]。研究チームは当初、AsCas12a crRNAを対象として開発されたDeepCpf1 [CRISPRメモ_2018-02-04第3項参照] をCas12aバリアントに適用したが、適合しなかったことから、この研究で獲得したデータをベースにCNNを介して訓練と評価を繰り返しつつseq-DeepCpf1variantsから始まりenseq-DeepCpf1を経て、クロマチンのアクセシビリティの情報も加えた enDeepCpf1に至った。
ここまでの標的部位における活性予測に加えて、Cas12aバリアントが引き起こす挿入欠失といったオフターゲット編集と染色体転座を評価するために、GUIDE-seqを強化した。
GUIDE-seqでは、Casヌクレアーゼが誘導するDNA二本鎖切断 (DSB)サイトに、NHEJを介してゲノムへと統合されるタグとなるdsODNを偏りなく増幅してシーケンシングすることで、オフターゲットを判定する。研究チームは、Cas12a-crRNA 複合体によるタグdsODNのターンオーバー切断により、切り詰められたタグが生成され [論文Fig. 5参照]、タグに固有のプライマーとGUIDE-seq のタグ配列との不完全な一致が生じ、その結果、一部のオフターゲット統合部位が欠落することを見出した。
そこで、タグの増幅を改善し、不完全なタグによる欠落を補うことができるGUIDE-seq法の強化版enGUIDE-seqの開発に至った。これを利用して、ヒト細胞内の多数のホモポリマー配列を持つ31のターゲットに対する24種類のCas12aバリアントのオフターゲット活性を評価した。
そこで、タグの増幅を改善し、不完全なタグによる欠落を補うことができるGUIDE-seq法の強化版enGUIDE-seqの開発に至った。これを利用して、ヒト細胞内の多数のホモポリマー配列を持つ31のターゲットに対する24種類のCas12aバリアントのオフターゲット活性を評価した。
[出典] "Highly parallel profiling of the activities and specificities of Cas12a variants in human cells" Chen P, Wu Y, Wang H, Liu H [..] Yin L. Nat Commun. 2025-03-28. https://doi.org/10.1038/s41467-025-57150-9 [著者所属] Chongqing Medical U, Wuhan U (State Key Laboratory of Virology), Wuhan U Science and Technology, Wuhan Biorun Biosciences Co Ltd.
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