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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 ナチュラルキラー(NK)細胞は、さまざまながん細胞タイプに対して強力な細胞傷害活性を示す。NK 細胞と腫瘍細胞の相互作用の解明は、この50年間で、大きく進歩したが、NK細胞を介した腫瘍細胞の破壊を制御する制御因子はまだ完全には理解されていない。マルセイユを拠点とするフランスの研究チームは今回、Genome-wide CRISPR:Cas9 screening機能的細胞傷害性アッセイと組み合わせてゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーニング を実施し [Fig. 1引用右図参照]、結腸腺癌 HCT-116 細胞の NK 細胞を介した細胞傷害に対する感受性を調節する経路を明らかにした。

 NK 細胞との共培養で生き残った HCT-116細胞におけるガイド RNA の分布を分析した結果、ICAM-1が NKp44 媒介免疫シナプスの中心的な役割を担っていることが判明した。NKp44 は、NK細胞によるHCT-116腫瘍細胞の排除に不可欠な活性化受容体として機能する。さらに、アポトーシスまたはインターフェロン (IFN)-γ シグナル伝達経路に関与する遺伝子を破壊すると、NK細胞の攻撃に対する抵抗力が高まった。さらに、NK細胞由来のIFN-γが in vitro でミトコンドリアのアポトーシスを促進し、in vivoでB16-F10肺転移を制御することも明らかになった。

 今回得られた知見は、NK細胞ベースの治療では、腫瘍細胞表面のICAM-1レベルをモニタリングするか、その発現を調節することを検討する必要を、示している。さらに、NK細胞表面での FasL 発現を促進することが、NK細胞を介した腫瘍殺傷を強化するための重要な戦略であることが再確認された。IFN-γの拡散特性を考慮すると、NK 細胞由来の IFN-γ を利用して直接的な腫瘍細胞殺傷を強化し、サイトカイン拡散を介してバイスタンダー効果を促進する可能性も浮上し、さらなる研究が待たれる。
 
[出典] "Genome-wide CRISPR/Cas9 screen reveals factors that influence the susceptibility of tumor cells to NK cell-mediated killing" Guia S, Fenis A [..] Vivier E,  Narni-Mancinelli E. J Immunother Cancer. 2025-03-31. https://doi.org/10.1136/jitc-2024-010699 [著者所属] CIML (Marseille), Aix-Marseille-U, INSERM (U1104), Innate Pharma SA
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