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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 リソソームにおける細胞のリサイクルプロセスに重要なグルコセレブロシダーゼ(GCase)の活性を低下させるGBA1 遺伝子の変異は、パーキンソン病(PD)およびレビー小体型認知症(DLB)の一般的な危険因子である。しかしGBA1 変異体は浸透率が低く(同じ変異体を帯びていながら発症しないままの例が多々ある不完全浸透の例)、PDおよびDLBの発症に、他の遺伝子が寄与していることが示唆されていた。

 ノースウエスタン大学の研究チームは今回、ゲノムワイドCRISPRiスクリーニングを介して、リソソームにおいて特異的にGCaseの活性を調節するコマンダー複合体遺伝子とそれに対応するタンパク質を特定した。コマンダー複合体は16のサブユニットで構成されている。

 具体的には、COMMD/コイルドコイルドメイン含有タンパク質22(CCDC22)/CCDC93(CCC)およびコマンダー複合体の構成要素である銅代謝MURR1ドメイン含有3(COMMD3)タンパク質が、GCaseおよびリソソーム活性の修飾因子であることを同定した。COMMD3の欠損は、細胞外小胞を介したリソソームタンパク質の放出を増加させ、エンドリソソームへのタンパク質の送達を阻害し、結果としてリソソーム機能不全を引き起こす。

 また、PD関連の2つの独立したコホート(UK BiobankとAMP-PD; 6,166 PDと109,467コントロール)の分析から、コマンダー複合体における稀な機能喪失変異の存在が、PDリスクの上昇と関連していることが、示された。

 したがって、COMMD遺伝子および関連複合体はリソソームの恒常性を調節しており、PDおよびリソソーム機能不全に関連するその他の神経変性疾患の修飾因子となる可能性がある。また、コマンダー複合体の機能を高める薬剤が、細胞のリサイクルシステムを改善する可能性が示唆された。

[参考] コマンダー複合体(commander complex)
[出典] "Commander complex regulates lysosomal function and is implicated in Parkinson’s disease risk" Minakaki G, Safren N [..] Krainc D. Science. 2024-04-10. https://doi.org/10.1126/science.adq6650 [著者所属] Davee Department of Neurology, Northwestern U
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