肝細胞がん(HCC)は、局所的な染色体増幅を頻繁に起こし、その結果、遺伝子発現レベルが上昇する。メイヨー・クリニックとペンシルベニア大学の研究チームは今回、これらの増幅部位内のどの遺伝子が、がんドライバー遺伝子であるかを同定することにより、これらの十分に解明されていない遺伝子変化の役割を解明することを目的として、マウス肝臓におけるCRISPRaスクリーニングを実施した。
はじめに、TCGAのデータを用いて、コピー数増幅および発現上昇が頻繁に起こる遺伝子はすべてヒト染色体1qおよび8qに存在することを同定した。

その結果、ヒト染色体1q遺伝子であるZbtb7b、Vps72、Gba1、およびMrpl9 が肝腫瘍形成のドライバーとして浮上した。ヒトHCCでは、MRPL9、VPS72、またはGBA1 の発現レベルと生存率低下の間に相関する傾向がある。
検証アッセイでは、Vps72、Gba1、またはMrpl9 の活性化が、マウスにおいて広範な肝腫瘍形成と生存率低下をもたらした。RNA-seqからは、HCCを誘導する異なるメカニズムが明らかになった。すなわち、Mrpl9 活性化はミトコンドリア機能に関連する遺伝子を変化させ、Vps72 活性化はリン脂質代謝を変化させ、Gba1 活性化はエンドソーム-リソソーム活性を高めることで、いずれもが細胞増殖を促進する。 MRPL9、VPS72、またはGBA1 の高発現を示すヒト腫瘍組織の解析からも一致する結果が得られ、HCCの進行を促進させるメカニズムが保存されていることを示唆された。
[出典]
- 論文 "In Vivo CRISPR Activation Screening Reveals Chromosome 1q Genes VPS72, GBA1, and MRPL9 Drive Hepatocellular Carcinoma" Cell Mol Gastroenterol Hepatol. 2025-01-04. https://www.cmghjournal.org/article/S2352-345X(25)00001-3/fulltext [著者所属] U Pennsylvania (Dept Medicine, College of Arts & Sciences), Mayo Clinic (Dept Medicine)
- Editorial “In vivo CRISPR Activation Screening, a Powerful Tool to Discover Oncogenic Driver Genes in Hepatocellular Carcinoma” Gad S, Ye R, Qiu W. Cell Mol Gastroenterol Hepatol. 2025-04-14. https://doi.org/10.1016/j.jcmgh.2024.101459 [著者所属] Loyola U Chicago, Medical Research and Clinical Studies Institute (Egypt)
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