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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

2026-08-25 細胞外小胞(EV)を介したゲノム編集の具体例を以下に追記します:
  • VEDICシステムを介してCreリコンビナーゼをEVに搭載し、Cre-LoxP reporterマウスの側脳室へ単回投与(または持続注入)することで、DNA断片の切り出し(Cre組み換え)を誘導し、海馬で40%超、大脳皮質で30%超の細胞で組み換えを達成しました。この効率は、従来のAAV(アデノ随伴ウイルス)を介したDNA送達法に匹敵するものです。こうして、改変EVを用いて中枢神経系(CNS)へ遺伝子編集ツール(CRISPR/Cas9や塩基編集酵素など)を送達するという、ハンチントン病や脊髄性筋萎縮症といったCNSの遺伝性疾患に対する治療法が期待されます。
  • LPS誘発性の全身性炎症の治療に改変EVを適用し、生体内(in vivo)で治療効果が得られるレベルの細胞内タンパク質送達が達成されることが確認されました。これらの知見は、本アプローチの治療的有用性を示すものであり、ライソゾーム病(LSD)や酵素欠損症など、多岐にわたる疾患に対する治療法への展開が期待されます。
2025-05-05 初稿
 タンパク質およびRNA治療薬の臨床展開にあたって、その細胞内送達が依然として大きな課題である。カロリンスカ研究所を主とするスエーデン・英国・ベルギー・オランダ・ドイツ・エストニア・コロンビア・中国の研究チームが今回、効率的な送達の実現に向けて、生物に着想を得た(bio-inspired)特性を組み込んだ極めて強力な細胞外小胞(EV)を作出した。

 このEVは、能動的なカーゴの積載と放出のための自己切断活性を持つ人工のミニ・インテインタンパク質と、エンドソームからの脱出を可能にする膜融合性のVSV-Gタンパク質で構成されている。この組み合わせにより、カーゴとしてCreリコンビナーゼとCas9/sgRNA RNPを送達することで、それぞれ、in vitroで高効率な組換えとゲノム編集が、実現した。

 生体内では、Cre-LoxP R26-LSL-tdTomatoレポーターマウスの脳の側脳室にCreを内包させたEVを単回投与したところ、海馬と大脳皮質で、それぞれ、40%以上と30%以上の組み換え効率が達成された。さらに、NF-κB活性のスーパーリプレッサーを送達したところ、LPS誘発性全身性炎症が阻害され、このプラットフォームの治療可能性が実証された。

[詳細]

 タンパク質やRNAの細胞内送達は、細胞膜の本質的な不透過性のために依然として困難である。そのため、細胞内タンパク質送達を促進するための様々な戦略が開発されてきた。例えば、iTOPシステムは、NaClを介した高浸透圧と導入化合物を利用することで、初代細胞への高効率タンパク質送達を実現したが、生体内での可能性は限られている。細胞透過性ペプチド(CPP)も同様にいくつかの用途で有望性を示したが、エンドソームへの捕捉や毒性に関連する潜在的な限界が報告されている。最後に、脂質ナノ粒子やポリマーなどの様々なナノキャリアは、タンパク質の細胞内送達に頻繁に利用されているが、CPPと同様の弱点がある。

 これらの戦略に共通する課題もある。人工物ゆえに、生体内で様々な副作用を引き起こすリスクを伴っていることである。一方で、脂質二重層で包まれた細胞外小胞(EV)は、あらゆる細胞種から分泌・吸収され、生物学的に活性な分子の細胞間輸送を媒介する天然の送達媒体である。しかし、EVによる効率的細胞送達には、解決すべき課題があり、これまでの解決策には一長一短があった:
  • 治療用タンパク質を可溶性(または非結合性)の活性型でEV内に濃縮すること
  • 治療用タンパク質を標的細胞の細胞質へ効率的にエンドソームから放出すること
 本研究では、Mycobacterium tuberculosis(Mtu)recA21由来の改変型自己切断型ミニインテインを用いて、Engineering of extracellular vesicles 1-1EVソーティングタンパク質とカーゴタンパク質を連結した上で、EV内腔内でEVソーティングタンパク質から可溶性カーゴタンパク質の遊離を促進する [Fig. 1引用右図の参照;VFIC (VSV-G-Foldon-Intein-Cre;VEDIC (VSV-G plus EV-Sorting Domain-Intein-Cargo)  ]。このインテインは、441アミノ酸からなるMtu recAインテインの最初の110アミノ酸と最後の58アミノ酸で構成され、さらに4つの変異(C1A、D24G、V67L、およびD422G)を導入することで、37℃でpH感受性のC末端切断を可能にしている。

 エンドサイトーシスは細胞による生体高分子の取り込みの最も一般的な方法であるため、エンドソームへの捕捉は、治療用タンパク質とEVの両方の機能的な細胞内送達における主要な障壁となっている。一方で、ウイルス由来の膜融合タンパク質は、エンドソームからの脱出を誘導し、細胞質へのEVカーゴの放出を促進することが知られていた。

 本研究では、膜融合タンパク質である水疱性口内炎ウイルスG糖タンパク質(VSV-G)を、効率的なエンドソーム脱出活性化因子かつEVソーティングタンパク質として利用した。

 こうして、前述の2つの課題を同時に解決し、改変EVを用いた高効率な細胞内タンパク質送達を実現する2つのシステムを開発し、EVをベースとした治療用タンパク質送達の可能性を示すに至った。

[出典] "Engineering of extracellular vesicles for efficient intracellular delivery of multimodal therapeutics including genome editors" Liang X [..] Nordin JZ, El Andaloussi S. Nat Commun. 2025-04-29. https://doi.org/10.1038/s41467-025-59377-y [著者所属] Karolinska Institutet (Sweden), Karolinska University Hospital, Chalmers U Technology, Uppsala U, U Oxford (UK), MDUK Oxford Neuromuscular Centre, VIB Center for Inflammation Research (Belgium), Ghent U, Evox Therapeutics (UK), Shandong U (China), Shandong Provincial Hospital Affiliated to Shandong First Medical U, The Obstetrics and Gynecology Hospital of Fudan U, Universidad Industrial de Santander (Colombia), U Duisburg-Essen (Germany), Utrecht U (Netherlands), U Medical Center Utrecht, Institute of Technology (Estonia)
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