[注] Indirect CRISPR screening(間接型CRISPRスクリーニング)の手法 [*]を開発した東京科学大学(旧・医科歯科系研究者)による総説
がん生物学の進歩は、次世代シーケンシングの目覚ましい進歩によるがん遺伝子と腫瘍抑制遺伝子の同定によって達成された。単一細胞解析などの新しい技術が、がんの進行と異質性の解明に貢献している。レトロウイルス、トランスポゾン、RNA干渉、CRISPRなどの手法を含む逆遺伝学的スクリーニングは、遺伝子機能とがんにおける役割の探究に有用である。
特にランダム変異誘発のアプローチにおいて、CRISPRスクリーニングとその改良法は、その網羅性と遺伝子変異誘発の簡便性から、近年強力なツールとして注目されている。当初、CRISPRスクリーニングは細胞集団における生物学的表現型の解析に重点を置いていたが、その後、単一細胞解析と空間解析を組み合わせるなどの高度な技術を取り入れるように進化してきた。こうして、細胞間および空間的な相互作用の解析が可能になったことから、生体内の微小環境のより忠実な模倣が実現し、複雑な生物学的プロセスへのより深い洞察が得られるようになった。
これらのアプローチにより、がんの生存、薬剤耐性、腫瘍形成に関与する重要な遺伝子の特定が可能になり、がん研究と治療法開発が促進されている。
[構成]
1 Introduction
1.1 The Evolution of Random Mutation as a Genetic Perturbation
1.1.1 Retrovirus
1.1.2 Transposon
1.1.3 RNA Interference (RNAi) Library
1.1.4 CRISPR Library
1.2 Innovative CRISPR Screening System
1.2.1 Avoiding Picking Up Well-Known Target Genes in Genome-Wide Screening
1.2.2 Finding the Elements in Promoter Complex
1.2.3 Screening Technology Leading to Treatment
1.2.4 Combining CRISPR Screening With Single-Cell Analysis
1.2.5 Revealing the Spatial Interaction of Cells in Microenvironments
1.2.6 CRISPR Screening In Vivo
1.2.7 Development Screening With Alternative Cas Proteins
2 Future Perspective
[図表一覧]
- Table 1. Advantages and disadvantages of mutagenesis.
- Table 2. Genetic screening methods that combine perturbation screening based on the CRISPR libraries with single-cell analysis.
- Figure 1 Gene activation and interruption by the retrovirus and transposon
- Figure 2 Schemes of CRISPR libraries.
- Figure 3 Schemes of conventional and indirect CRISPR screening.
[出典] Review "Identification of Target Genes Using Innovative Screening Systems" Sugita K (杉田 佳祐), Kurata M (倉田 盛人). Pathol Int. 2025-05-05. https://doi.org/10.1111/pin.70019 [著者所属] 東京科学大学 (医科歯科, 病院)、がん研有明病院
[*] 間接的CRISPRスクリーニングの論文とプレスリリース
- "Indirect CRISPR screening with photoconversion revealed key factors of drug resistance with cell-cell interactions" Sugita K [..] Kurata M. Commun Biol. 2024-06-01. https://doi.org/10.1038/s42003-023-04941-9
- 「新規CRISPR screeningを用いた薬剤耐性の解明」― がん微小環境における細胞間相互作用の理解 ―. 東京科学大学 2023-06-01. https://www.tmd.ac.jp/press-release/20230601-1/
[従来型および間接型CRISPRスクリーニングの概略]
[注] 右下図はオリジナル論文のFig 1を一部手が加えらた総説のFigure 3から引用
- 上段:従来型CRISPRスクリーニングでは、スクリーニング条件下でランダム変異を誘導するガイドRNA(gRNA)を用いて腫瘍細胞数の増加/減少を検出することで、薬剤耐性の候補遺伝子を同定する(上段)。
- 下段:間接型CRISPRスクリーニングでは、ランダム変異を接着支持細胞に誘導し、腫瘍細胞と共培養することで、いわゆる「微小環境」を作り出す。その後、原因となる支持細胞を分離し、細胞間相互作用を用いて薬剤耐性を解析する。
(B) Dendra2を用いた間接型CRISPRスクリーニングシステム
- 微小環境を模倣するために、細胞間相互作用システムとして、ヒト胚性腎臓細胞由来HEK293細胞にSV40 Large T抗原を発現させたHEK293T細胞と、ヒト組織球性リンパ腫・マクロファージ由来U937細胞を組み合わせた。
- U937細胞と、その支持細胞として機能するHEK293T細胞にはDendra2を導入しCRISPR-sgRNAによる編集を加えた上で、共培養した。
- シタラビン曝露下では、U937細胞のほとんどが死滅し、特定のHEK293T細胞近傍のU937細胞のみが生存・増殖した。
- こうしてU937細胞に薬剤耐性をもたらした細胞支持細胞を増殖させ、レーザー走査顕微鏡で同定した。その後、405 nmレーザーで光変換を行った。
- 光変換後、赤色蛍光を発するHEK293T細胞をFACSで分取した。分取された細胞を解析し、細胞間相互作用によって誘導される薬剤耐性に関与する遺伝子を同定した。

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