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- 英国、米国、日本、ベルギー、ナイジェリア、中国の研究チームによるコウモリ・ウイルスの系統地理学的解析からの結論
- キクガシラコウモリHorseshoe bats)は、2002年のSARS(Severe acute respiratory syndrome: 重症急性呼吸器症候群)の発生とCOVID-19パンデミックの両方を引き起こしたウイルス(SARS-CoV-1とSARS-CoV-2)の祖先の主な宿主である。なお、SARS-CoV-1とSARS-CoV-2は、コロナウイルス科ベータコロナウイルス属の亜属"サルベコウイルス (Sarbecovirus)"に分類されている。

 SARS-CoV-1とSARS-CoV-2がキクガシラコウモリからどのようにして、SARSやCOVID-19が発生した場所に到達したのか、そしてコウモリ以外の動物が関与していたかどうかについては、議論が続いている。
[注1] 米国ホワイトハウスは最近、SARS-CoV-2は中国の武漢研究所で生み出された人工ウイルスのリークに由来するとする説を、ホームページに掲載した 。なお、米国の厚生長官(保健福祉長官)は現在、小児ワクチンが自閉症を引き起こすという説を唱え、また、反ウイルス団体の理事長であったロバート・F・ケネディー・ジュニア氏である]

 国際共同研究チームは、オンラインで入手可能なゲノム配列データの進化系統解析と地理的分布の情報を組み合わせて解析することで、SARS-CoV-1とSARS-CoV-2がヒトに出現する前のアジア全域における進化史を解明した。

 この解析にあたっては、コロナウイルスはコウモリの宿主内で大量の組み換えを起こすことが課題となった。すなわち、2つの異なるウイルス (例えば、AとB)が同じコウモリ個体に感染すると、AとBのウイルスゲノムの断片が混合したゲノムからなるウイルス(例えば C)が生成され、Cの異なる部分がそれぞれ異なる進化の歴史を持つことから、ウイルスの進化を遡及を複雑にする。研究チームは、ウイルスゲノムの組み換えが発生しない領域をすべて特定し、それらを用いてウイルスの進化の歴史を再現した。

 その結果、SARS-CoV-1およびSARS-CoV-2に関連するサルベコウイルスが、中国西部と東南アジアで数千年にわたって循環していたことが明らかになった。この間、サルベコウイルスは、宿主であるキクガシラコウモリと同様の速度で地理的に移動していたことも明らかになった。「キクガシラコウモリの採餌範囲は約2~3kmと推定され、その拡散能力はSARS-CoV-2関連サルベコウイルスの拡散速度とほぼ同等です」と、共責任著者のSimon Dellicour博士(ベルギー)は述べている。

 一方で、今回の分析では、SARS-CoV-1とSARS-CoV-2の最も最近のサルベコウイルスの祖先は、ヒトへの感染が初めて報告される10年足らず前にヒトへの最初の感染地から1,000km以上離れた発生地から出ていたことも明らかになった。論文筆頭著者のJonathan E. Pekar博士は「最初のSARS-CoV-1は中国西部で流行していました。これは、広東省と中国中南部でSARSが出現するわずか1~2年前のことです。また、SARS-CoV-2は中国西部またはラオス北部で流行していました。これは、武漢でCOVID-19が出現するわずか5~7年前のことです」と述べている。

 研究チームは、SARS-CoV-1とSARS-CoV-2が長い距離をこれほど短期間に移動することは、コウモリの個体・集団の自然な拡散では不可能に近く、野生動物のトレーダーが中間宿主を介して偶然に持ち込んだ可能性が高いとした。実際、これまでの研究では、SARS-CoV-1は、毛皮や肉のために取引されることが多いハクビシンやタヌキによって、中国西部の雲南省から広東省に運ばれた可能性が高いと示唆されている。そして、今回の研究が、SARS-CoV-2も同様の経路でヒトに感染したという、これまでで最も強力な証拠を提示した。

 共同責任著者のMichael Worobey博士は「最初のSARSコロナウイルスに最も近縁のウイルスは、中国南部のハクビシンとタヌキから発見されました。これらの動物は、発生源であるコウモリの個体群から数百マイルも離れた場所に生息していました」「20年以上にわたり、科学界は、生きた野生動物の取引によって数百マイルもの距離が移動されたと結論づけてきました。SARS-CoV-2でも全く同じパターンが見られます。」と述べている。

 この研究結果は、SARS-CoV-1は自然発生的に発生したが、SARS-CoV-2は実験室からの漏洩によって発生したという、広く流布している説に反論するものである。共同責任著者のJoel O Wertheim博士は「COVID-19パンデミックの発生当初、『武漢とコウモリウイルス保有地の距離が人獣共通感染症の起源としては遠すぎる』という主張がなされていた」「この論文は、それが異常なことではなく、実際には2002年のSARS-CoV-1の出現と非常によく似ていることを示しています」と述べている。

 野生生物取引によるヒトと動物の接触の増加、都市化、生息地の破壊により、世界中で人獣共通感染症のスピルオーバー(流出)事例が増加している。研究チームは、野生コウモリ個体群からサルベコウイルスのサンプル採取を継続することで、次のコロナウイルスパンデミックの発生源を特定できる可能性があると考えている。さらに、これらのウイルスやその他の病原体の進化史を理解することは、将来の感染症の発生に備え、制御するに、必要な作業である。

[注2] WHOは2016年に、警戒すべき新興・再興感染症の病原体として「エボラウイルス感染症、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ熱、ラッサ熱、MERSおよびSARSコロナウイルス感染症 (SARS-CoV-1)、ニパウイルス感染症、リフトバレー熱、チクングニア熱、重症熱性血小板減少症候群、ジカウイルス感染症、その他既知および未知の病原体」を挙げていた。そして、2019年に武漢市でSARS-CoV-2が初めて認識された ["Good Participatory Practice for trials of (re-)emerging pathogens (GPP-EP): Guidelines" WHO 2016-12-06]

[注3] この研究は、米国NIH(助成金R01 AI135992、R01 AI153044、R01 AI162611、U19 AI135995、およびT15LM011271)、米国NSF(助成金F.4515.22)、フランダース研究財団(助成金G098321N、G0D5117N、およびG051322N)、欧州連合ホライズン2020プロジェクトMOOD(助成金契約874850)、および欧州連合ホライズン2020研究イノベーションプログラム(助成金契約725422)から一部資金提供を受けた;2025年米国政府は感染症関連予算を大幅削減する方針を示した。

[出典]
[新型コロナウイルスの起源に関するcrisp_bio記事]
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