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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] TXNIP (Thioredoxin-interacting protein / チオレドキシン相互作用タンパク; TBP-2(Thioredoxin Binding Protein-2) 

 TXNIPは、糖尿病において血糖恒常性を破綻させる小胞体(ER)および酸化ストレスの制御に関与している。しかし、TXNIP欠損がヒト幹細胞由来の体性代謝細胞の分化および機能に及ぼす影響は未だ明らかではない。

 ブリュッセル自由大学の研究チームは今回、CRISPR-Cas12aゲノム編集技術を用いて、TXNIP欠損(TXNIP<-/->)H1ヒト胚性幹細胞(H1-hESC)を作製した。これらの細胞は、肝細胞様細胞(hepatocyte-like cells : HLC)および幹細胞由来インスリン産生膵島(stem-cell-derived insulin-producing islets: SC-islet)へと分化誘導された。TXNIP<-/-> およびTXNIP<+/+> SC-isletの成熟および機能性は、雄または雌のNOD-SCIDマウスの腎被膜下に移植することにより評価した。

 その結果、TXNIP は、ノックアウトされても幹細胞由来のHLCまたはSC-isletの機能的分化を促進しないことが確認された。むしろ、TXNIP の欠損は、代謝上の利点をもたらさずにストレス反応を変化させる。

 例えば、TXNIP<-/-> hESC由来のSC-isletは、TXNIP<+/+> SC-isletと同等の生存率、内分泌細胞組成、およびサイトカイン応答を示す。IFNαまたはIFNγ処理後、TXNIP<-/-> SC-isletではSTAT1のリン酸化が増加しており、TXNIP 欠損にもかかわらずIFNシグナル伝達が損なわれていないことを示した。NOD-SCIDマウスに移植したところ、TXNIP<-/-> およびTXNIP<+/+> SC-islet はともにヒトCペプチドを産生し、グルコース刺激に反応した。しかし、TXNIP<-/-> SC-isletは対照群と比較して血糖コントロールの改善やグルコース刺激によるインスリン分泌を示さなかった。

[出典] "Genome editing of TXNIP in human pluripotent stem cells for the generation of hepatocyte-like cells and insulin-producing islet-like aggregates" Traini L, Negueruela J [..] Bansal M, Gurzov EN. Stem Cell Res Ther. 2025-05-04. https://doi.org/10.1186/s13287-025-04314-5 [著者所属] U Libre de Bruxelles (Belgium), VIB-VUB Center for Structural Biology,  Vrije U Brussel, U Edinburgh (UK).
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