RNAに誘導されるCRISPRシステムに基づくゲノム編集は、生物医学および農業分野の幅広い分野で広く利用されているが、オフターゲット効果が依然として課題である。
RNA誘導ゲノム編集におけるオフターゲット効果は、一塩基多型(SNP)や挿入・欠失(インデル)などの遺伝的変異によって個人間で異なることが知られている。これらの変異はgRNAの結合効率を変化させ、新たなオフターゲット効果をもたらしたり、標的部位での切断効率を低下させたりする可能性が考えられる。したがって、個別化されたオフターゲット部位の予測および検証戦略を開発することが極めて重要になるが、これまでのツールは性能や拡張性に限界がある。
CRISPRitz、VARSCOT、SNP-CRISPR、AlPaCas、CRISPRmeといった計算ツール [*1-5] が、遺伝子変異を考慮して潜在的なオフターゲット部位を特定するように設計されてきた。しかし、CRISPRitzとVARSCOTはハプロタイプレベルのオフターゲット同定を行うことができず、Webインターフェースを備えていない。CRISPRmeツールはヒトゲノムに限定されている。同様に、SNP-CRISPRは限られた種のみをサポートしており、NGGおよびNAGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)型に限定されている。
韓国の研究チームが今回、個々のアレルと遺伝的変異を考慮して潜在的なオフターゲット部位を特定するために、Cas-OFFinder [Bioinformatics, 2014] をベースにして新しいパイプライン
「Variant-aware Cas-OFFinder」を開発し [アルゴリズムについてFigure 1引用右図参照]、 研究チームは、ヒトゲノムとピーマンの品種を用いて、ハプロタイプレベルで各アレルに固有の潜在的なオフターゲット部位を持つこのパイプラインの拡張性と性能をベンチマークした。

Variant-aware Cas-OFFinderはhttps://rgetoolkit.com/var-cas-offinder にて利用可能になっている。またソースコードならびにベンチマークのコードとデータも公開されている。
[*] 引用crisp_bio記事と論文
- CRISPRitz:CRISPRメモ_2019/11/30 [第5項] CRISPRitz: CRISPRシステムのオフターゲット部位をgRNA配列に対するindelsや変異も考慮しつつ高速に予測するソフトウエアパッケージ
- VARSCOT:2019-06-27 "VARSCOT: variant-aware detection and scoring enables sensitive and personalized off-target detection for CRISPR–Cas9" Wilson LOW, Hetzel S [..] Bauer DC. BMC Biotechnol. 2019-06-27. .
- SNP-CRISPR:crisp_bio 2020-10-30 SNP CRISPR: SNPsに特異的なゲノム編集に向けたsgRNAs設計.
- AlPaCas:crisp_bio 2024-06-02AlPaCas:プロトスペーサー隣接モチーフ (PAM) アプローチによる対立遺伝子特異的CRISPR遺伝子編集.
- CRISPRme:crisp_bio 2023-01-06 ヒトの遺伝的多様性が、治療用遺伝子編集において、オフターゲット編集結果に影響する
[出典] "Variant-aware Cas-OFFinder: web-based in silico variant-aware potential off-target site identification for genome editing applications" Mekonnen AM, Seong K, Kim H, Park J. Nucleic Acids Res. 2025-05-08. https://doi.org/10.1093/nar/gkaf389 [著者所属] Pusan National U, Korea Advanced Institute of Science and Technology, Kangwon National U
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