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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 UBA5 は、小胞体(ER)の恒常性維持に重要な役割を果たすユビキチン様の翻訳後修飾であるUFMylationカスケードのE1酵素をコードしている。UBA5 関連脳症の臨床表現型としては、発達遅延、てんかん、知的障害などが知られている。現在まで、UBA5 病原性変異の細胞および分子への影響を研究するためのヒト化神経細胞モデルは存在していない。

 セントジュード小児研究病院の研究チームが今回、UBA5 の複合ヘテロ接合性変異を持つ2名の患者から、患者由来皮質オルガノイドの培養に成功し、その特性を明らかにした。
  • 2名とも、低形質アレル (hypomorphic allele)(p.A371T)をコードするミスセンス変異と、ナンセンス変異(p.G267*またはp.A123fs*4)を共有していた。
  • 100日齢オルガノイドのscRNA-seq解析により、GABA作動性介在ニューロンの発達に欠陥があることが特定された。
  • 患者由来オルガノイドにおいて、異常なニューロン発火とサイズの縮小が認められた。
  • メカニズム的には、改変U87-MG細胞およびUBA5 病原性変異体を発現する患者由来オルガノイドにおいて、ER恒常性の乱れと小胞体ストレス応答経路の悪化が認められた。
 異常な分子および細胞表現型を救済するためにUBA5タンパク質の発現量を増加させる2つ治療法候補について評価した。評価対象は、長鎖ノンコーディングRNAであるSINEUPによる翻訳効率の向上と、dCas9をベースとするCRISPRaによる転写活性化の2種類であり、いずれも、FMylation経路の調節不全を軽減し、ニューロン活動を部分的に回復させた。

 本研究は、UBA5 関連脳症の潜在的な治療法を示唆し、また、疾患モデルにおけるヒトオルガノイドの可能性を明確に示すことにもなった。

[出典] 
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