アデニン塩基編集因子(ABE)は、A・T塩基対をG・C塩基対に変換する。標的遺伝子座の配列が塩基編集効率に影響することから、標的配列に基づいて塩基編集の結果を予測できる計算モデルの開発が進められてきた [*1-6]。しかし、これらのモデルは細胞株で生成された塩基編集データセットを用いて学習されており、生体内における塩基編集の予測性能は保証されていなかった。
アテンション技術を組み入れた深層学習でCBEとABEの結果予測システム"BE-DICT"を2021年に発表していたチューリッヒを拠点とする研究チームは今回、ペンシルベニア大学およびAcuitas Therapeutics社と共同で、まず、細胞株およびマウス肝臓において、合計12,000個のガイドRNAを用いて、2,195個の病原性変異を標的とし、ABEによるスクリーニングを実施した。HEK293T細胞では、SpCas9-ABEmax, SpG-ABEmax, SpRY-ABEmax, SpCas9-ABE8e, SpG-ABE8e, およびSpRY-ABE8eの6種類について比較検討し、マウス肝臓においては、標的可能範囲が最も広かったSpRY-ABEmaxとSpRY-ABE8eによるスクリーンを評価した。
HEK293T細胞へのABE-mRNAエレクトロポレーションによって生成されたin vitroデータセットと、アデノ随伴ウイルス(AAV)または脂質ナノ粒子(LNP)を介したヌクレオシド修飾mRNA送達によって生成されたin vivoデータセットとの間には強い相関が認められた(スピアマンR = 0.83–0.92)。
さらに、細胞株(R = 0.60–0.94)および肝臓(R = 0.62–0.81)において、アデニン塩基編集効率を高精度に予測する深層学習モデルBEDICT2.0を開発した。
プラスミドベースの細胞株データセットで学習させた場合、BEDICT2.0は外部データセットにおいて、BE-HIVEやDeepABEといった先行機械学習モデルと同等の性能を示しまた。しかし、これらの先行モデルと同様に、in vivoデータセットに適用すると性能が低下した。そこで、mRNAを介してABEが送達された細胞株データでもBEDICT2.0を学習させたところ、in vivoで高い精度を維持したモデルが得られた。
BEDICT2.0を利用することで、in vitroおよびin vivoの両方において、バイスタンダー効果を最小限に抑えつつ高いオンターゲット編集効果を達成できるsgRNA-ABEの組み合わせを特定することができる。
プラスミドベースの細胞株データセットで学習させた場合、BEDICT2.0は外部データセットにおいて、BE-HIVEやDeepABEといった先行機械学習モデルと同等の性能を示しまた。しかし、これらの先行モデルと同様に、in vivoデータセットに適用すると性能が低下した。そこで、mRNAを介してABEが送達された細胞株データでもBEDICT2.0を学習させたところ、in vivoで高い精度を維持したモデルが得られた。
BEDICT2.0を利用することで、in vitroおよびin vivoの両方において、バイスタンダー効果を最小限に抑えつつ高いオンターゲット編集効果を達成できるsgRNA-ABEの組み合わせを特定することができる。
本研究はまた、ABEが病原性変異の大部分を修正する上で大きな可能性を秘めていることを裏付けた。
[引用crisp_bio記事と論文]
[引用crisp_bio記事と論文]
- BEdeep:2023-09-11 塩基エディターのオフターゲットを深層学習で予測.
- DeepBE:2023-05-17 63種類の塩基エディター (BE) の編集効率と編集結果を予測する深層学習モデル
- FORECasT-BE:2022-03-14 "Predicting base editing outcomes using position-specific sequence determinants" Pallaseni A, Peets EM [..] Parts L. Nucleic Acids Res. 2022-03-14/04-08.
- BE-DICT:2021-08-28 CBEとABEの結果予測システム: 数千のターゲットライブラリーでの実験データをベースとしてアテンション技術を組み入れた深層学習で実現
- DeepABEとDeepCBE:2020-07-12 DeepCpf1とDeepCas9に続くDeepABEとDeepCBE
- BE-HIVE:2020-06-13 Liuグループ, 塩基エディターの編集結果を予測する機械学習モデルBE-Hiveを開発・公開
[出典] "Predicting adenine base editing efficiencies in different cellular contexts by deep learning" Kissling L, Mollaysa A [..] Krauthammer M, Schwank G. Genome Biol 2025-05-08. https://doi.org/10.1186/s13059-025-03586-7 [著者所属] U Zurich (Institute of Pharmacology and Toxicology, Dept Quantitative Biomedicine), ETH Zurich (Institute of Molecular Health Sciences), UPenn (Perelman School of Medicine), Acuitas Therapeutics Inc (Canada)
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