[注] 光温熱耐性:光温熱療法(Photothermal Therapy: PTT)によって胃がん細胞を死滅させることができるが、PTTに対して熱ショックタンパク質(HSP)が発現することから、次回以後、PTTの効果が減弱していく可能性がある。
病因遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9送達に際して相乗的な治療モードを加えるアプローチは、効率的な腫瘍治療への新たな展望をもたらす可能性がある。山東第一医科大学の研究チームは今回、CRISPR/Cas9を高濃度に担持したバイオニック2D FeSナノプラットフォーム(FCRM)を開発し、胃がんの光温熱耐性に対するCRISPR/Cas9遺伝子編集とフェロトーシスの相乗効果を検証した。
- FeSナノシートの超薄構造とpH応答性により、FCRMは腫瘍微小環境で速やかに分解し、CRISPR/Cas9とFe2+を効果的に放出し、これによって、光温熱効果が強化される。
- CRISPR/Cas9は、細胞内の抗アポトーシスタンパク質であるSurvivinのレベルを正確にダウンレギュレーションする。
- Fe2+は腫瘍細胞の脂質過酸化とフェロトーシスを誘導する。
- こうして、Survivinタンパク質の調節とフェロトーシスが相乗的にHSPの発現を抑制し、PTTにおける腫瘍細胞の光温熱抵抗性を低下させる。
- さらに、FCRMは腫瘍の磁気共鳴造影において顕著なコントラスト増強をもたらし、腫瘍の正確な診断に役立つ。
[出典] "Overcoming Photothermal Resistance of Gastric Cancer by Bionic 2D Iron-Based Nanoplatforms with Precise CRISPR/Cas9 Delivery" Liu H [..] Yang M, Sun X. ACS Nano 2025-05-08. https://doi.org/10.1021/acsnano.4c16846 [著者所属] Shandong Provincial Key Laboratory of Precision Oncology (Shandong First Medical University and Shandong Academy of Medical Sciences);グラフィカルアブストラクト
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