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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 これまでに5000種類を越える抗生物質耐性遺伝子(antibiotic resistance genes: ARGs)が特定されており、その蔓延が世界的な公衆衛生上の懸念事項になっている。廃水は、ARGsの蔓延をモニターするに格好の対象であるが、廃水中のARGsは微量なため、検出が困難であった。

 メタゲノムシーケンシングとqPCRという2つの従来のARG検出法は、それぞれ感度が低く、スループットにも限界があった。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームは、ライブラリ調製中に標的のARGをエンリッチするための、CRISPR-Cas9改変型次世代シーケンシング(NGS)法(CRISPR-NGS法)を開発した。既知の全ゲノム配列を持つ細菌分離株の混合物に基づいて決定したこの手法の偽陰性と偽陽性はいずれも2/1208と1/1208と低い値であり、この方法の信頼性が証明された。

 続いて、未処理の廃水サンプル6件について、このCRISPR-NGS法と従来のNGS法で得られた結果を比較した。同じサンプルで通常のNGS法を用いて検出されたARGと比較して、CRISPR-NGS法では、異なる発生源から採取された6つの廃水サンプル中に、臨床的に重要なKPCベータラクタマーゼ遺伝子など、最大1189個多いARGsと最大61個多いARGファミリーが、低存在量で検出された。

 CRISPR-NGS法では、通常のNGS法と比較して、qPCR相対存在量で定量化したARGの検出限界が10-4から10-5へと向上した。

 CRISPR-NGS法は、廃水中のARG検出に有望であり、存在量が少ないが多様性に富む他のターゲットの検出にも適用可能である。

[出典] "Enhanced detection for antibiotic resistance genes in wastewater samples using a CRISPR-enriched metagenomic method" Mao Y, Shister JL, Nguyen TH. Water Research. 2025-04-15. https://doi.org/10.1016/j.watres.2024.123056 [著者所属] U Illinois Urbana-Champaign (Dept Civil and Environmental Engineering, Carl R. Woese Institute for Genomic Biology, Dept Microbiology, Carle Illinois College of Medicine)
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