系統特異的遺伝子や組織特異的遺伝子といったhPSC中のサイレント遺伝子の改変は、発生研究、疾患モデル化、薬剤スクリーニングのための堅牢なプラットフォームを提供する。しかし、サイレント遺伝子の編集結果を検証するには、hPSCをサイレント遺伝子が発現する細胞まで分化させる必要がある。これには複雑で費用がかかり数日から数ヶ月という長い期間を要する。
スローン・ケッタリングがん研究所の研究チームは今回、CRISPRaを用いて、遺伝子を標的としたゲノム編集 hPSC 株の検証のための迅速かつ効果的なワークフローを確立した。
研究チームはまず、3つのCRISPRaシステム*、dCas9-VP64-p65-Rta(VPR)、dCas9-VP64 + sgRNA-MS2-p65-HSF1 (相乗活性化メディエーター: synergistic activation mediator, SAM)、およびSuntag-P65-HSF1(SPH)の堅牢性を比較し、サイレント遺伝子を標的とする一連のレポーターhPSC株を用いて、SAMがすべての標的においてサイレント遺伝子活性化に最も強力であることを確認した。
研究チームは、SAMにさらに、脱メチル化モジュールTET1を組み込むことで、高度にメチル化された遺伝子の遺伝子活性化が改善されることも確認した。
CRISPRaシステムを適用することで、未分化hPSCにおいて、シングルまたはデュアルレポーター遺伝子活性化の迅速な検証と、タンパク質分解タグ(dTAG)ノックインおよびノックアウトhPSC株の機能評価をわずか48時間で実行できることを実証した。
このアプローチは、分化を通じて標的遺伝子の発現を誘導する必要性を回避し、hPSC 段階でサイレント遺伝子編集を検証するための迅速かつ効果的なアッセイを提供する。
[出典] "Leveraging CRISPR activation for rapid assessment of gene editing products in human pluripotent stem cells" Wu Y [..] Studer L, Zhou T. Stem Cell Reports. 2025-04-25. https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2025.102499 [著者所属] Sloan-Kettering Institute for Cancer Research;グラフィカルアブストラクト参照
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