[注] ARMM (ARrestin domain-containing protein 1 (ARRDC1)-Mediated Microvesicle)
CRISPR-Cas9遺伝子編集による治療を促進するには、より高精度で高効率な送達法が必要である。Harvard T.H. Chan School of Public Healthの研究チームが今回、細胞膜上で形成される細胞外小胞の一種であるARMM(アレスチンドメイン含有タンパク質1媒介性マイクロベシクル)が、CRISPR-Cas9複合体をパッケージングおよび送達するための新たなプラットフォームとなる可能性を示した。
- Cas9をARRDC1に直接融合することで、ARMMへの効率的なCas9パッケージングが実現する。
- ARRDC1融合Cas9は、野生型Cas9に匹敵する遺伝子編集効率を示す(2つの異なるARRDC1-Cas9融合構造体で実証)
- Cas9に、小胞の出芽に必要な最小限のモチーフのみを含む短縮版ARRDC1(sARRDC1)を融合すると、Cas9パッケージングの強化に特に効果的である。
- さらに、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)を組み込むことで、ARMMの出芽とCas9のカプセル化がさらに改善される [グラフィカルアブストラクト参照]。
研究チームは、外因性GFP遺伝子を導入したU2OS細胞と、アルツハイマー病に関連する内因性アミロイド前駆体タンパク質(APP)遺伝子を標的としたヒト神経細胞をモデルとして、実証実験を行なった。ARMMとVSV-Gの組み合わせは高い編集効率をもたらし、神経細胞においてAPP遺伝子を標的としたARMMは病原性アミロイドペプチドを著しく減少させる。
これらの結果は、ARMMがCRISPR-Cas9送達のための多用途かつ効果的なプラットフォームであり、神経変性疾患やその他の遺伝性疾患の治療への応用に有望なツールであることを示している。
[出典] "Engineering ARMMs for improved intracellular delivery of CRISPR-Cas9" Chen Z, Wang Q, Lu Q. Extracellular Vesicle. 2025-05-09. https://doi.org/10.1016/j.vesic.2025.100082 [著者所属] Harvard T.H. Chan School of Public Health (Dept Environmental Health and Molecular Metabolism)
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