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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2025-05-19 国立遺伝学研究所の関連X投稿を以下に引用 (日本語解説へのリンクが埋め込まれている)
2025-05-17 初稿
 イエネコのX連鎖オレンジ(O)遺伝子座は、黒褐色の色素沈着を抑制しオレンジ色を促進する未知の分子メカニズムを制御している。錆び猫や三毛猫に見られる黒褐色とオレンジ色の斑点が交互に現れる現象は、メスの哺乳類で起きるランダムX染色体不活性化(random X-chromosome inactivation: random XCI)の表現型発現の典型例と考えられている。しかし、ネコゲノム中のO遺伝子は特定されておらず、オレンジ色化の原因となる遺伝子変異は依然として不明であった。

 九大を主とする日本の研究チームが今回、オレンジの毛を持つネコ26匹と持たないネコ41匹のゲノム情報を比較することから、Rho GTPase活性化タンパク質をコードするX連鎖 ARHGAP36 遺伝子のイントロン内に存在する5.1キロベース(kb)の欠失が、オレンジ色化の原因遺伝子変異であることを、特定した [右図の論文責任著者と三毛猫の画像はX投稿から引用]。

 欠失領域には高度に保存された推定調節エレメントが含まれており、その除去によってARHGAP36 発現が変化すると考えられる。特筆すべき点として、猫の皮膚組織におけるARHGAP36 の発現は、多くのメラニン生成遺伝子の抑制と関連しており、ユーメラニン(黒褐色)からフェオメラニン(赤褐色または黄色)への色素合成の移行が起こっている可能性が示唆された。

 さらに、ARHGAP36 遺伝子はヒトおよびマウスの雌細胞においてXCIを起こし、XCI依存性のCpGアイランドメチル化が、雌の飼い猫におけるランダムXCIと一致するというエビデンスが得られた。

 この5.1kbの欠失はオレンジ色の毛色を持つ飼い猫に広く見られることから、この表現型は単一の起源を持つことが示唆される。

[注] この研究はクラウドファンディングからの資金(1,000万円)を得て、実現された [読売新聞 2025-05-16 三毛猫のオレンジ色の毛作る遺伝子特定、世界初「模様の謎を解明」…九州大などチーム]

[出典] "A deletion at the X-linked ARHGAP36 gene locus is associated with the orange coloration of tortoiseshell and calico cats" Toh H, Au Yeung WK, Unoki M [..] Sasaki H. Curr Biol. 2025-05-15. https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.03.075 [著者所属] 九大, 遺伝研, ICU, 東大, 麻布大, アニコム先進医療研究所 (株), 名大, 稲員犬猫香椎病院, 近大;グラフィカルアブストラクト 
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