- 患者の自己申告による健康状態と、神経心理学的検査およびバイオマーカーを比較
COVID-19を発症した人の相当数は、ブレインフォグなどの長期にわたる認知症状を経験する。しかし、これまでの研究では、これらの患者を、検査でCOVID-19患者であったがその後健康を回復した対照群と比較したことがなく、なぜ一部のCOVID患者はCOVID後に認知症状を発症し、他の患者は発症しないのかを解明することが困難であった。
ミシガン州のグランド・ラピッズを拠点とする研究チームは今回、検査で確認されたCOVID後の患者の2つのグループ(認知症状が有ると無し)を対象として、認知機能と心理機能の指標、機能状態と生活の質に関する自己申告の内容、ならびに、ストレス、炎症、神経可塑性のバイオマーカーを比較した。
症例対照研究に、2022~2024年に米国ミシガン州西部の医療システムから17人の参加者(25~65歳; PCRにて過去の感染陽性を確認)を得た。
- 10人の参加者が認知症状を報告し(ロングCOVID群)、7人は完全に回復し残留症状は無かった(対照群)。
- 参加者全員が、自己評価による健康状態と生活の質に関する面接、一連の神経認知検査、バイオマーカー分析のための採血を受けた。
- 神経心理学的検査では、文字流暢性(letter fluency)においてロングCOVID群が有意に低かったことを除き、群間差は認められなかった(p < .05)。
- ロングCOVID群は、生活の質、身体的健康、情緒機能、精神的健康に関する評価が対照群より有意に低かった。
- 脳可塑性のバイオマーカーである神経成長因子(NGF)の血清値は、ロングCOVID群で有意に低く、対照群と比較して、炎症マーカー(インターロイキン(IL)-10)の血清値が中央値以上となる可能性が有意に高かった(p = 0.015)。
- バイオマーカー分析は、完全に回復した患者と比較して、ロングCOVID患者では炎症過程が長期化している可能性があることを示唆した。
神経心理学的検査およびバイオマーカーからの知見は、COVID後の脳機能の変化に関する患者の自己報告と整合し、より大規模なコホートを対象とする比較解析が有意義なことが示唆された。
[出典] "Self-reported health, neuropsychological tests and biomarkers in fully recovered COVID-19 patients vs patients with post-COVID cognitive symptoms: A pilot study" Lawrence MR, Arnetz JE, Counts SE, Ahmed A, Arnetz BB. PLoS One. 2025-05-15. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0315486 [著者所属] Corewell Health (Division of Clinical Neuropsychology, Dept Neurology), College of Human Medicine (Dept of Family Medicine, Dept Translational Neuroscience)
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