パン酵母は、代謝経路を改変することで、プロキラルケトンの全細胞バイオコンバージョンを介してキラルアミンを生成するための微生物工場として利用できる。ルンド大学の研究チームは今回、ベンジルアセトンから(S)-1-メチル-3-フェニルプロピルアミン(MPPA)への立体選択的変換をモデル反応として用い、アラニン-ピルビン酸代謝ノードの調節による還元アミノ化の促進について検討した。
- Chromobacterium violaceum 由来のプロミスキュアス・オメガトランスアミナーゼ(cv-ATA)の複数コピーを、
CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を介して [Figure 3引用右図参照]、染色体へ組み込むことで、活性酵母触媒が得られた。
- 好気性バッチ培養下のバイオリアクターにおける生理学的特性評価により、エタノールを利用するアミン生成は二相性増殖期後 (post-diauxic growth)においてのみ起こることが明らかになった。
- 天然アラニンの利用を低減するため、内因性アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT1)をノックアウトし、cv-ATAに置換した。
- この戦略を他の株にも迅速に適用するため、簡便なCRISPR/Cas9法を用いた普遍的な遺伝子置換法が開発された。
- ALT1をcv-ATAに置換することで、ALT1をそのまま含む対照株と比較して、反応速度が2.6倍向上した。
- 15N L-アラニンおよび13Cグルコース由来の代謝物のNMR測定により、グルコース存在下での生育中にピルビン酸が生成し、アミン生成が阻害されることが示された。
- 最適条件下にて、ベンジルアセトンからMPPAへの生体触媒的変換の収率が58%に達した。
[出典] "Biocatalytic reductive amination with CRISPR-Cas9 engineered yeast" Hagman A [..] Carlquist M. Sci Rep. 2025-05-15. https://doi.org/10.1038/s41598-025-01182-0 [著者所属] Lund U
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