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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 がん治療薬の創薬・開発における人工知能(AI)の役割は、従来、時間と費用のかかる新規治療法の市場投入プロセスを変革する可能性を秘めていることから、大きな注目を集めている。機械学習(ML)やディープラーニング(DL)などのAI技術は、膨大なデータセットの効率的な分析を可能にし、創薬ターゲットの迅速な特定、化合物の最適化、臨床転帰の予測を促進する。本レビューでは、創薬初期段階から臨床試験の設計・開発に至るまで、がん治療薬開発の様々な段階におけるAIの多面的な応用について考察する。
  • 創薬初期段階では、AI主導の手法がターゲットの特定、仮想スクリーニング(VS)、分子ドッキングをサポートし、有望な化合物の特定を効率化する正確な予測を提供する。
  • さらに、AIはde novo創薬設計やリード化合物の最適化にも重要な役割を果たし、アルゴリズムによって新規分子構造を生成し、その特性を最適化して薬剤の有効性と安全性プロファイルを向上させることができる。
  • 前臨床開発においては、特にin silicoシミュレーションによる薬剤の毒性評価において、AIの予測モデリング能力が大きなメリットをもたらす。
  • AIはバイオマーカーの発見においても極めて重要な役割を果たし、患者の層別化や個別化治療アプローチに役立つ特定の分子シグネチャーの特定を可能にする。
  • 臨床開発において、AIはリアルワールドデータ(RWD)を活用し、試験設計を最適化し、患者選択を改善し、新薬の市場投入までの時間を短縮する。
 AIはがん治療に変革をもたらす可能性を秘めているが、データ品質、モデルの解釈可能性、規制上のハードルなど、依然として課題も残っている。これらの限界に対処することは、がん治療薬の発見と開発におけるAIの可能性を最大限に引き出すために不可欠である。

 AIは進化を続けており、ゲノミクスやCRISPRなどの他の技術との統合は、個別化がん治療に向けて期待が寄せられている。

 本レビューでは、AIががん治療薬の発見と開発に与える影響を包括的に概観し、急速に進化するこの分野の将来の方向性を明らかにする。

[出典] REVIEW "Role of artificial intelligence in cancer drug discovery and development" Sarvepalli S, Vadarevu S. Cancer Lett. 2025-05-23. https://doi.org/10.1016/j.canlet.2025.217821 [著者所属] St. John's U (USA), Kakatiya U (India)
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