CRISPRシステムに基づくゲノム編集技術の中でも、DNAドナーを介した相同組み換え修復(HDR)は精密ゲノム編集の有望な手法であるが、編集効率に課題があった。中国の研究チームは今回、HDRを介したアプローチを再評価する観点から、この総説を用意した。
- HDRを介した精密ゲノム編集を促進するには、DNA二本鎖切断からの修復において、非相同末端結合(NHEJ)などの競合する経路よりもHDRを優先するための経路選択と、DNAドナーの入手可能性が必要である。
- HDR経路選択を促進する戦略としては、Cas9の活性を細胞周期のS/G2期に限定すること、特異的阻害剤を用いてNHEJを阻害すること、そしてHDRを支持するタンパク質の発現を高めることなどが挙げられる。
- DNAドナーとして一本鎖DNA(ssDNA)ドナーに注目し、その入手可能性を向上させる手法として、ssDNAドナーをCas9リボ核タンパク質に結合させること、内因性タンパク質や化学修飾を介してドナーをリクルートすること、あるいは環状ssDNAドナーを用いて修復部位への効率的な送達を確保すること、が挙げられる。
- HDRの効率性を高めるには、HDR経路の活性を促進する戦略とドナーの利用可能性を高める戦略を組み合わせることで、精密ゲノム編集の成果を向上させることができる。
[出典] REVIEW "Optimizing homology-directed repair for gene editing: the potential of single-stranded DNA donors" Jin YY, Zhang P, Liu DP. Trends Genet. 2025-05-27. https://doi.org/10.1016/j.tig.2025.04.014 [著者所属] Institute of Basic Medical Sciences/Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical College, Medical Epigenetics Research Center/Chinese Academy of Medical Sciences
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