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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 土壌の塩類化が、作物の収穫量に影響を及ぼす大きな脅威として浮上している。地球温暖化は、大量の陸水喪失につながり、土壌の塩分濃度を高めるからである。こうした塩類化土壌を攻略する主要な戦略が、耐塩性作物の作出・栽培である。

 Sea Rice 86(SR86)は、古代インディカ米から派生した優れた耐塩性イネ品種である。しかし、SR86は、草丈の高さや強い光周期感受性(hotoperiod sensitivity: PS)などの形質を持ち、農業生産への応用が制限されている。

 中国の研究チームは今回、CRISPR/Cas9マルチプレックス・ゲノム編集技術、ハイスループットシーケンシング、交配、および個体選抜を介して、SR86の10形質に関与する13個の遺伝子を編集し、改良版SR86(SR86M)を開発した。 

 SR86Mのその後の解析により、9つの遺伝子に予想通りの変異が検出され、7つの形質に変化が見られた。具体的には、草丈およびPSの低下、籾数、籾長、香り、窒素利用効率の向上が見られた。

 SR86Mの改善された農業形質は、SR86と同様に優れた耐塩性に加え、現代の栽培イネと類似しており、将来的な栽培への適応性を示している。また、本研究の結果は、マルチプレックス・ゲノム編集が作物品種の改良に有効であることも示している。

[出典] "Directional improvement of agronomic traits in salt-tolerant rice by multiplex-genome-editing" Hao Y [..] Guo J. J Integr Plant Biol. 2025-05-05. https://doi.org/10.1111/jipb.13926 [著者所属] South China Agricultural U, Yangzhou U
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