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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

- 脱ユビキチン化酵素USP5の病的なミスセンス変異が, 痛みに対する無感覚を引き起こす

 Cav3.2 T型カルシウムチャネルと、脱ユビキチン化酵素USP5によるその調節異常は、炎症性疼痛および神経障害性疼痛の発症に寄与している。カナダのカルガリー大学を主とする研究チームは今回、USP5に新生のヘテロ接合性ミスセンス変異R24Wを有し、疼痛無感覚を呈する小児患者の症例を報告した。

 研究チームは、CRISPR-Cas9とssDNAドナーテンプレートを介したノックインによりR24W変異を帯びたモデルマウスを作成し、急性および慢性疼痛モデルにおいて詳細な行動解析を行った。

 両性のヘテロ接合性R24Wマウスは、慢性炎症性疼痛モデルおよび神経障害性疼痛モデルにおいて、急性疼痛および熱過敏症に抵抗性を示した。対照的に、オスのR24Wマウスのみに機械的過敏症の発症に対する抵抗性が付与された。

 R24Wマウスでは、CFA(Complete Freund’s adjuvant)誘発性炎症で通常観察されるCav3.2およびUSP5の上方制御が欠如していた。さらに、変異USP5は酵素活性の劇的な減少を示すが、Cav3.2との相互作用はより強くなった。したがって、R24W変異体USP5は、Cav3.2の顕性負性制御因子として作用することにより、ヒトにおける慢性疼痛および急性疼痛状態の重要な制御因子であり、USP5がヒトの慢性疼痛の潜在的な治療標的となる可能性が示唆された。

[出典]
  • 論文 "A pathological missense mutation in the deubiquitinase USP5 leads to insensitivity to pain" Antunes FTT, GandiniMA, Garcia-Caballero A [..] Zamponi GW. J Exp Med. 2025-05-16. https://doi.org/10.1084/jem.20241877 [著者所属] U Calgary (Canada), Zymedyne Therapeutics, Oslo University Hospital (Norway), Universidade do Vale do Itajaí (Brazil);グラフィカルアブストラクト 
  • RESEARCH HIGHLIGHT "CRISPR helps to show why a boy felt no pain - Mutation in an enzyme leads to resistance to chronic and acute pain, according to research in mice" Nature 2025-05-30. https://doi.org/10.1038/d41586-025-01653-4
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