CRISPR-Casシステムは、現代生物学に革命をもたらした。バイオテクノロジー応用に用いられるCRISPR-Casシステムのほとんどは培養細菌由来だが、環境微生物叢には未開発の多様なこれらのシステムが潜在していることが示唆されている。しかしながら、海洋におけるCRISPR-Casシステムの普及を左右する環境要因と生物学的要因についての理解は依然として限られている。
スペインを主とする研究チームは今回、Malaspina Expeditionで採取された地球全体に分布する176の海洋微生物メタゲノムを対象にCRISPR-Casシステムを探索した。ここでは、深海に重点を置き、自由生活型および粒子付着型(particle-attached)の微生物叢の両方から採取された。その結果、有光層よりも深海の微生物叢で、粒子付着型よりも自由生活型微生物において、CRISPR-Casシステムが相対的に多く存在することが示された。この結果は、これらの生息地におけるアーケアとそのウイルスの濃度が高いことを反映している。
研究チームは1,146個のCRISPR-Cas遺伝子座を特定し、その中には独特な遺伝子座構造を示すものも含まれていた。これらの遺伝子座から合計48個のCas9タンパク質が同定され、その多くは新規な可能性があった。
今回の発見はCRISPR-Casの多様性の範囲を拡大し、深海がこれらの資源の豊富な貯蔵庫であることを示唆している。
[出典] "Widespread and Abundant CRISPR-Cas Systems in the Deep Ocean" Sánchez P, Ferri-Peradalta M [..] Coutinho FH, Acinas SG. bioRxiv. 2025-05-26 (preprint). https://doi.org/10.1101/2025.05.26.656144 [著者所属] Institut de Ciències del Mar (ICM)-CSIC (Spain), Universidad de Alicante, Bellvitge Biomedical Research Institute - IDIBELL, Centre National de la Recherche Scientifique (France), King Abdullah University of Science and Technology (Saudi Arabia)
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