真核微細藻類は、持続可能な現代バイオテクノロジーのための有望なグリーン細胞工場として着実に発展している。しかしながら、さらなる発展に対する最大の障害の一つは、遺伝子組換えされた微細藻類株における遺伝子発現レベルと安定性を著しく制限する効率的な遺伝子サイレンシング機構が内在していることである
[グラフィカルアブストラクト引用右図上段参照]。

ドイツのビーレフェルト大学の研究チームは今回、モデル生物とされているクラミドモナス・ラインハルティにおいて、エピジェネティック制御に関与する複数の遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9ノックアウト・スクリーニングを実施し、エピジェネティックな遺伝子サイレンシングの主要因子を同定した。
遺伝子サイレンシングを担う候補遺伝子11個を破壊し、その後、ダブルノックアウト(KO)およびトリプルノックアウト(KO)変異体において系統的に遺伝子発現を組み換えることで、これまでに確立された株と比較して、遺伝子サイレンシングが著しく減少し、遺伝子発現の安定性が向上した株が得られた。
さらに、藍藻のNostoc punctiforme 由来のDnaEスプリットインテインを用いた、二重標的ゲノム編集のためのスプリット選択マーカーシステムを確立した。これにより、抗生物質耐性遺伝子などの選択マーカーを 2 つのプラスミドまたは類似の DNA ベクターに分割しておき、それぞれの選択マーカーの両半分がインテインのトランススプライシング活性によって統合、発現、翻訳後融合された場合にのみ、抗生物質耐性が実現される。
本研究で確立された27の新規ノックアウト変異体は、基礎的なエピジェネティクス研究のための貴重なリソースとなる可能性がある。
[出典] "Genome editing of epigenetic transgene silencing in Chlamydomonas reinhardtii " Einhaus A [..] Kruse O. Trends Biotechnol. 2025-05-30. https://doi.org/10.1016/j.tibtech.2025.04.019 [著者所属] Bielefeld U (ドイツ)
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