パラログ遺伝子は、進化の過程でしばしば長期間にわたって機能的に冗長である。パラログ遺伝子は、機能は保持されているものの、配列および発現に潜在的変化を蓄積し、それがエピスタシスを介して将来の変異の影響を調節する可能性がある。
カナダの研究チームは今回、過去1億年間に発現レベルおよびアミノ酸置換の差異を蓄積しながらも、同じ結合選択性を維持してきた冗長ミオシンタンパク質に対する変異の影響を検証した。
S. cerevisiaeのMYO3とMYO5のSH3ドメインのハイスループット表現型解析と飽和突然変異誘発とCRISPR-Casゲノム編集を組み合わせ、すべての可能な単一アミノ酸置換を導入し、これらの変異体が8つの生物学的に関連するタンパク質相互作用パートナーへの結合にどのように影響するかを評価した。
その結果、パラログSH3における同じ変異が、パラログ特異的かつ相互作用パートナー特異的な方法で結合を変化させることが明らかになった。この同一変異が異なる帰結をもたらす偶発性(contingency)は、2つのパラログミオシン遺伝子のプロモーター強度の差、および導入された変異とSH3内の潜在的分岐部位との間のエピスタシス的相互作用によって説明される [Fig. 6: Pairwise epistasis is sufficient to create contingency.参照]。また、この偶発性の起結として、一部の変異について、一方のパラログでは機能不全にするのに十分である一方で、もう一方のパラログへの影響は最小限に止まることも、見出された。
本研究において、細胞ネットワークで機能の冗長性を維持しながら蓄積する潜在的相違が、どのようにして遺伝子の重複を特定の運命に偏らせるのか、明らかにされた。
[出典] "Cryptic genetic variation shapes the fate of gene duplicates in a protein interaction network" Dibyachintan S [..] Landry CR. Nat Commun. 2025-02-11. https://doi.org/10.1038/s41467-025-56597-0 [著者所属] PROTEO-Regroupement Québécois de Recherche sur la Fonction, Université Laval, Lunenfeld-Tanenbaum Research Institute
コメント