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[注] フェロトーシス(ferroptosis)は、鉄に依存し、過酸化脂質の蓄積によって特徴付けられる「制御されたプログラム細胞死」の一種である。

 従来の治療法に対して高度な抵抗性を示すがん細胞は、しばしば、脂質代謝および酸化還元に対する脆弱性を帯びて、フェロトーシスに対する感受性が高くなっている。この分子機構には、フェロトーシス阻害因子として作用するセレノプロテインの一種であるグルタチオンペルオキシダーゼ4GPx4)が関与している。

 ノースウェスタン大学の研究チームは最近 [*]HDL NPを用いてがん細胞のSR-B1を標的とすると、細胞のGPx4が枯渇し、細胞膜脂質過酸化とがん細胞死の増加が伴うことを報告した 。ここで、HDL NPは合成高密度リポタンパク質様ナノ粒子(High-Density Lipoprotein-like NanoParticle)を意味し、SR-B1は高親和性HDL受容体スカベンジャー受容体クラスBタイプ1(high-affinity HDL receptor Scavenger Receptor class B type 1)を意味し、HDL NPが細胞と細胞膜における脂質代謝を制御する。

 これらのデータは、HDL NPがフェロトーシスを誘導する可能性を示唆していた。そこで、研究チームは今回、卵巣明細胞がん(ovarian clear cell carcinoma : OCCC)由来のES2細胞株において、CRISPR-Cas9を用いた偏りのないポジティブセレクション・スクリーニングに次ぐターゲット検証実験を行い、HDL NPがGPx4を制御してがん細胞を殺傷するメカニズムを解明した。
  • スクリーニングの結果、致死量のHDL NP存在下で細胞生存を可能にするアシルCoA合成酵素長鎖ファミリーメンバー4(acyl-CoA synthetase long chain family member 4: ACSL4)とチオレドキシン還元酵素1(thioredoxin reductase 1: TXNRD1)をコードする2つの遺伝子がヒットした。すなわち、これらの遺伝子の欠損によってHDL NPに対する耐性が付与される。
  • ACSL4とTXNRD1の機能を検証する実験により、HDL NPがSR-B1を標的として細胞のセレン代謝を制御してセレノプロテイン(最も顕著にはGPx4)の発現を低下させ、細胞を酸化ダメージに対して感受性にし、フェロトーシスによる細胞死を引き起こすメカニズムが明らかになった。
 こうして、がん細胞の代謝系において、 SR-B1に対する多機能合成 HDL NP リガンドによって同時に作動させられ、がん細胞をフェロトーシスに誘導する2種類の標的が、特定された。

[ノースウエスタン大学の研究チームの先行研究]
[出典] "CRISPR screen reveals a simultaneous targeted mechanism to reduce cancer cell selenium and increase lipid oxidation to induce ferroptosis" Lamperis SM [..] Thaxton CS. PNAS. 2025-05-30. https://doi.org/10.1073/pnas.2502876122 [著者所属] Northwestern U
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