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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 ヒト胚編集については、複数のバイオテクノロジー業界団体と学術団体が最近、遺伝的に受け継がれるヒトゲノム編集に対して10年間のモラトリアム(一時停止)を求める声明を発表していた [crisp_bio 2025-05-18]。その中、暗号通貨取引プラットフォーム"コインベース"の創始者であるBrian Armstrong CEOが、ヒト胚ゲノム編集を目指すスタートアップへの資金提供を表明した。MIT Technology Reviewの和訳版の冒頭には生成AIの一つであるClaude 3による要約が紹介されている:
  • コインベースCEOが胚の遺伝子編集スタートアップへの出資を表明した
  • 一塩基編集などの技術進歩により、より安全で精密な胚の遺伝子編集が可能になった
  • 一部研究者は資金力のある企業の参入を歓迎しているが、倫理的な懸念も根強い
[この記事のきっかけとなったBrian Armstrong CEOのX投稿を以下に引用]
 この投稿の中で、Armstrong CEOは「米国成人の大多数が、重篤な先天性疾患を治療するために"baby"の遺伝子を改変することは適切としている」という調査結果を引用している。

 Armstrong CEOはこれまで、寿命を伸ばすことを目指す
New Limit
を、不死の研究に投資すべきと主張するBlake Byerと共同創業するなどで、「注目されてきた」テック企業家の一人である。

 Armstrong CEOの提案には、Armstrong CEOにヒト胚ゲノム編集の技術を説明したチームを率いたコロンビア大学のDieter Egli准教授と米国生殖医学会の元会長のオレゴン健康科学大学のPaula Amato教授が、歓迎の意を表明している。また、Armstrog CEOが参加を募ったオフレコのディナーパーティー「Embyro Editing Dinner」には、 Egli研究室のポストドクや、Doudna研究室で学びMammoth Biosciencesの共同設立者のLucas Harrington博士が参加している。

 本記事冒頭の「10年間のモラトリウム」は、ゲノム編集を施した胚からの出産は、技術的にも倫理的にも未成熟であることから、提案されていた。CRISPR/Cas9ゲノム編集技術だけでなく、DNA二重鎖切断を必要としない塩基編集技術にも目的外の編集結果をもたらすリスクがあることが報告されており、いずれにしても、新たな形態の「優生学」につながる懸念が伴っている。


[出典] NEWS "Crypto billionaire Brian Armstrong is ready to invest in CRISPR baby tech" Regalado A. MIT Technology Review. 20205-06-05. https://www.technologyreview.com/2025/06/05/1117909/crypto-billionaire-brian-armstrong-is-ready-to-invest-in-crispr-baby-tech/;和訳 「コインベース創業者、『禁断の技術』胚編集に大胆な投資計画https://www.technologyreview.jp/s/363317/crypto-billionaire-brian-armstrong-is-ready-to-invest-in-crispr-baby-tech/
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