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 コロンビア大学の研究チームはヒトT細胞でPIK3CD/PIK3R1の大規模並列塩基編集を行い、数千の変異体を臨床的に重要な指標(リン酸化AKT/S6)へとマッピングし、100を超えるVUSおよび注釈なしの新規変異体を機能分類に供し、先天性免疫異常(inborn errors of immunity: IEI)のコホートの中で27のヒットを発見した。

[詳細]

 次世代シーケンシング(NGS)による臨床診断は、疾患関連遺伝子の発見、疾患を引き起こす機能的変異の同定に、特にIEIの場合には、変異によって阻害された経路を標的とする精密治療の開発に、大きく貢献してきた。一方で、検出される変異のほどんどは臨床的意義が不明な変異(variants of uncertain significance: VUS)である。すなわち、病原性か良性か、明確に分類できない変異であり、診断と精密治療(個別化治療)に対する障害となっている。コロンビア大学の研究チームは今回、健全な細胞に標的遺伝子に網羅的に変異を誘導し、それらがもたらす表現型から、病原性か良性かを判定するアプローチを考案・実装し、IEIの一種である活性化PI3Kδ症候群(APDS関連VUSで検証した。

 APDSは、PIK3CD またはPIK3R1 遺伝子のバリアント(変異体)に起因するIEIであるが、2つの遺伝子はそれぞれ、ホスホイノシチド3キナーゼδ(PI3Kδ)ヘテロダイマーの触媒サブユニット(p110δ)と調節サブユニット(p85)をコードしている。これらの変異体により、リンパ球で過剰なPI3K/AKTシグナル伝達が起こり、組織内のリンパ組織増殖およびリンパ腫が誘発される。

 APDSの診断は、患者が既知の関連徴候および症状を呈し、PIK3CD またはPIK3R1 のこれまで報告された数少ない病原性変異の1つを呈した場合に下される。VUSが発見された場合は、しばしば、フローサイトメトリーを介した抗原受容体刺激後のAKT(Ser473)またはS6(Ser235/Ser236)のリン酸化を測定するアッセイが用いられる。また、細胞モデルにおけるプラスミドエンコード変異体と野生型対立遺伝子の過剰発現も用いられる。このレベルのエビデンス(臨床症状、病原性変異、およびPI3Kδ経路出力の上昇)は、APDS患者の症状と免疫細胞機能を改善するFDA承認の選択的PI3Kδ阻害剤であるレニオリシブ(leniolisib)を処方するに必要である。

 しかし、疾患の表現型スペクトルをより正確に特定し、患者の迅速な診断を介して精密管理戦略の可能性を最大限に引き出すためには、PIK3CD またはPIK3R1 のすべての機能的変異体の包括的な特徴づけを、臨床メタデータを用いた大規模患者コホートにおけるより広範なジェノタイピングと組み合わせることが、不可欠である。

 コロンビア大学の研究チームは今回、塩基エディターのABE8eABE9に、標的とする内因性遺伝子座全コード領域(イントロンおよび非翻訳領域それぞれに20塩基を含む)を網羅するガイドRNA (sgRNA)ライブラリー(タイリング・ライブラリー)を組み合わせて、初代培養ヒトT細胞のPIK3CD およびPIK3R1 遺伝子にA-to-GおよびT-to-Cの塩基変換を誘導し、各変異体に見られるAKT/S6リン酸化をアッセイすることで、各変異体を評価した。

 その結果、100を超えるVUSおよび新規変異体を機能獲得(GOF)または機能喪失(LOF)として機能的に分類するに至った。GOFと分類された変異は、さらなる臨床観察によって病原性変異として分類できる可能性がある。

 こうした知見を、63万人以上のアメリカ人のゲノムを解析したAll of Us [Nature, 2024] の精密医療プログラムのデータと照合したところ、約5,000人に1人のアメリカ人に機能獲得型変異の可能性がある遺伝子変異が発見されるに至った。これまで、APDSの患者は米国では数百人程度と考えられていた。

 また今回の解析において、レニオリシブが、GOFを帯びたT細胞の異常なシグナル伝達と機能不全を救済し、レニオリシブとmTORC1/2阻害薬の新規併用療法に反応する部分的に薬剤耐性のPIK3R1ホットスポットも明らかになった。

 この研究の「患者で発見される前に、疾患関連遺伝子の変異を網羅的に分類しておく」アプローチは、APDS に対する理解を変えただけでなく、一般にVUSがもたらす臨床的曖昧さを消し、また、多くの超希少あるいは稀な遺伝性疾患がこれまで考えられていたほど稀ではないことも示唆するに至った。

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