crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 遺伝子コドンシステムの縮重のため、すべての一塩基変異がアミノ酸配列の変化をもたらすわけではない。このような変異は同義変異と呼ばれ、進化論では中立的とみなされている。一方で、最近、酵母を対象とした研究から最近  [Nature, 2022]、同義変異が非同義変異と同様に細胞の適応度を阻害する可能性があることが報告され、同義変異が中立性について議論が再燃している [crisp_bio 2023-04-24]。酵母での報告以前にも、ウイルスや原核生物を対象とした研究から、同義変異がこれらの生物の適応度に影響を与える可能性が示唆されていたからである。しかし、これらの知見が哺乳類、特にヒトに当てはまるかどうかについては、不明なままであった。

 これまでに、少数の同義変異がヒト疾患と関連付けられ [Nat Rev Genet, 2011]、癌の潜在的な原因として特定されてはいる [Cell, 2014]。しかし、有害な同義変異を予測するツールの開発にもかかわらず、ヒトにおける実験的に確認された症例は依然として少なく、ヒト細胞における同義変異の大規模研究のための標準化された実験方法が必要とされていた。

 中国の研究チームは今回、プライム編集(PE)技術のPEmax [crisp_bio 2022-03-21]を用いて、ヒトタンパク質コード遺伝子3,644個を標的とする297,900種類のepegRNAライブラリ [crisp_bio 2021-10-15]を作成し、ヒト細胞の適応度に影響を与える機能的同義変異をスクリーニングした [論文Fig. 1参照]。

 スクリーニングの結果、ヒトにおける同義変異の大部分は中立的である可能性が高いものの、厳密な品質管理を施した後も、少数ではあるが、表現型の変化を引き起こす可能性がある同義変異が見出された。そこで、機械学習を介して、これらの変異がmRNAのスプライシング、フォールディング、転写、翻訳など、様々な生物学的プロセスにどのように影響するかを特定した。さらに、スクリーニングデータをモデルに統合することで臨床的に有害な同義変異の予測も実現した [論文Fig. 6参照]。

[出典] "Prime editor-based high-throughput screening reveals functional synonymous mutations in human cells" Niu X, Tang W, Liu Yo [..] Liu Yi, Wei W. Nat Biotechnol 2025-06-24. https://doi.org/10.1038/s41587-025-02710-z [著者所属] Peking U (北京), Shandong Cancer Hospital and Institute (済南), Changping Laboratory (北京)
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