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 Inflammaging(炎症老化)は加齢に伴って慢性炎症が増加することであり、老化の特徴と考えられている。しかし、炎症老化を循環サイトカインに基づいて測定する手法にはまだコンセンサスが得られていない。

 University of SherbrookeのMaximilien Franck博士とUniversité de Sherbrooke老化研究センター/コロンビア大学Robert N. Butler Columbia Aging Center (University of Sherbrooke老化研究センター兼任)のAlan A. Cohen博士をはじめとするカナダ、米国、イタリア、フランス、マレーシア、シンガポール、ドイツ、ロシアの研究チームは、19種類のサイトカインを含むイタリアのInCHIANTIデータセットで検出された炎症老化軸を、別の工業化集団(シンガポール縦断的老化研究)または2つの先住民の非工業化集団(ボリビアアマゾンのTsimané/チマネ族
とマレー半島のOrang Asli/オラン・アスリ)に一般化できるかどうかを評価した。

 具体的にはサイトカイン軸構造の類似性と、InCHIANTIの結果を再現する炎症老化軸が加齢とともに増加するか、または健康転帰と関連があるかどうかを評価した。シンガポール縦断的老化研究は、IL-6とIL-1RAを除いてInCHIANTI研究と類似していた。チマネ族とオラン・アスリ族は、年齢との関連がほとんどないか全くなく、加齢関連疾患との関連もない、著しく異なる軸構造を示した。
  • チマネ族の約66%は少なくとも1つの腸内寄生虫感染症に罹患しており、オラン・アスリ族の70%以上は慢性感染症に罹患していた。
  • 炎症老化マーカーは、工業化社会集団においては慢性疾患と強く関連していたが、先住民集団においては関連はみられなかった。
 本研究は、老化炎症が普遍的な老化バイオマーカーという仮説に疑問を投げかけ、免疫老化プロセスは集団に特異的であり、環境、生活習慣、感染への曝露の総体であるエクスポソーム*に大きく影響され、主に工業化されたライフスタイルの副産物であることを示唆した。

[*]
"Complementing the Genome with an ‘Exposome': The Outstanding Challenge of Environmental Exposure Measurement in Molecular Epidemiology" Wild CP, Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.  (2005) 14 (8): 1847–1850. https://doi.org/10.1158/1055-9965.EPI-05-0456

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