[注] 熊本大学小野昌弘特任教授が命名したTockyは「時」に由来し"Timer-of-cell-kinetics-and-activity"に相当する。Tockyは当初、発光スペクトルが自発的に青から赤に変化する蛍光タイマータンパク質(fluorescent Timer protein)とコンピューターアルゴリズムを組み合わせることで、生体内での分化のダイナミクスを明らかにするシステムとして開発された [*]。
遺伝子発現の時間的変化は、様々な生物学的プロセスにわたる遺伝子調節を理解するために重要な情報である。蛍光タイマータンパク質をベースとするTockyは、単一細胞レベルでの転写ダイナミクスの分析を可能にするが、タイマー蛍光データの複雑さがその幅広い応用を制限してきた。
インペリアル・カレッジ・ロンドンにおいてTockyを開発した熊本大学小野昌弘特任教授は今回、標題の技術融合のアプローチにより、フローサイトメトリーによるタイマー分析を介したFoxp3 の転写ダイナミクスの解明に取り組んだ。
- CRISPRゲノム編集技術を利用してエンハンサーConserved Non-coding Sequence 2(CNS2)を欠損したFoxp3 蛍光タイマー・レポーターマウスを創製した。
- 単一細胞レベルでのクラス固有の特徴識別のために、画像変換とクラス固有の特徴可視化を組み込んだ畳み込みニューラルネットワーク(CNN) ベースのAIモデルを開発した。
- まず、特定の条件下でのFoxp3 転写頻度の制御におけるCNS2の新たな役割が明らかになった。
- さらに、異なる年齢の野生型Foxp3 蛍光タイマー・レポーターマウスを解析した結果、新生児マウスから老齢マウスまでFoxp3 の発現パターンが異なることが明らかになった。すなわち、新生児脾臓Foxp3 陽性T細胞に顕著な胸腺様の特徴が認められた。
こうして、Tocky, フローサイトメトリー、CRISPR, そしてAIの融合が、in vivoでの転写ダイナミクスを理解するための先進的な手法であることが、示された。
[*]
- "TockyPrep: data preprocessing methods for flow cytometric fluorescent timer analysis" Ono M. BMC Bioinformatics. 2025-02-08.
- [*] "A timer for analyzing temporally dynamic changes in transcription during differentiation in vivo" Bending D [..] Ono M. J Cell Biol. 2018-06-25. [著者所属] Imperial College London, University College London Great Ormond Street Institute of Child Health, 京大
[出典]
- 論文 "Machine learning-assisted decoding of temporal transcriptional dynamics via fluorescent timer" Irie N, Takeda N, Satou Y, Araki K, Ono M. Nat Commun. 2025-07-01. https://doi.org/10.1038/s41467-025-61279-y [著者所属] 熊本大学, Imperial College London
- 日本語解説「AI で“遺伝子の時間”を読み解く-蛍光タイマーTocky 技術を活用-」熊本大学. 2025-07-04. https://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakujouhou/kouhou/pressrelease/2025_file/release250704-1.pdf;手法の図解が用意されている。
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