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 清華大学・中国人民解放军海军军医大学 (上海)のHuji Xu教授が率いる研究チームは2024年に、CRISPR-Cas9遺伝子編集により健常人のT細胞から導出したCD19標的CAR T細胞による自己免疫疾患の臨床試験に初めて成功していた [*]
[*] crisp_bio 2024-10-13 健常人由来ドナー細胞を用いたキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法が, 初めて、自己免疫疾患を寛解に導く

 研究チームは今回、CAR-NK細胞療法により自己免疫疾患の一種である重症びまん皮膚全身性強皮症(diffuse cutaneous Systemic sclerosis: dcSS)患者の治療に成功した。

 Nature 誌のニュース記事は、Huji-Xu教授らの研究成果と共に、6月にスペイン・バルセロナで開催された欧州リウマチ学会連合(EULAR)でのRui Therapeutics社の発表も紹介している。そこでは、関節、腎臓、脳などの臓器に炎症を引き起こす可能性のある自己免疫疾患、全身性エリテマトーデスの治療としてCAR-​​NK細胞を投与された27人の患者のデータを発表した。治療後、参加者全員が何らかの改善がみられ、中には治療後2年近く経過観察を受け、現在も寛解状態にある患者もいることが、報告された。なお、このCAR-NK細胞は多くの自己抗体産生細胞によって産生されるCD19単独を標的としていた。Huji-Xu教授らのCAR-NK細胞は、後述するように、CD19を産生しない長寿命の抗体産生細胞群も排除するようにBCMAも標的としている。

[詳細]

 今回樹立されたCAR-NKは、iPS細胞にシトシン塩基エディター(CBE)とCRISPR-Cas9を利用して然るべく遺伝子改変を加えたのち分化させたCD19とBCMAを標的とする二重標的(バイシストロニック)CAR-NK細胞 (コード番号QN-139b)であり、dcSS患者に対して、最小限の毒性でB細胞の大幅な減少をもたらした:
  • 患者は6か月の追跡調査中に、従来の治療に抵抗性を示す自己抗体の減少や、皮膚と血管構造の修復といった線維化の逆転をはじめとする顕著な臨床的改善を示した。
  • 末梢血の単一細胞解析により、治療によってB細胞がよりナイーブな表現型に移行し、病原性B細胞が排除されたことが明らかになった。
  • プロテオーム研究では、炎症と線維化の抑制、組織再生の促進、血管新生の改善が実証された。
  • 病理学的評価により、患部皮膚から浸潤リンパ球が除去され、皮膚および微小血管構造が修復されたことが確認された。
 これらの所見は、QN-139bが重症自己免疫疾患に対する有望な免疫調節治療薬であることを示唆している。

CAR T細胞療法との比較

 CAR T細胞療法には、患者自身のT細胞を利用する自家療法と健常人ドナーのT細胞を利用する他家療法がある。前者は血液腫瘍の治療に革新的効果をもたらしたが、多大な時間と経費を要し、また、固形腫瘍に対する治療効果は以前として不十分である。後者はその汎用性とコストの面から自家療法を代替するものとして期待されているが、ドナーのばらつきのため再現性に課題があり、品質管理が徐々に改善されてきてはいるが、重度のサイトカイン放出症候群や神経毒性のリスクが払拭されるに至っていない。

 CAR-NK細胞療法は、CAR依存性およびCAR非依存性(自然免疫介在性)の抗腫瘍活性、主要組織適合抗原複合体非依存性細胞傷害性、アロ反応性リスクの低減、および主要なCAR T細胞毒性の回避といった観点から、既製の治療薬としても使用できる有望な次世代CAR免疫細胞の1つである [**]
[**] Review "Forks in the road for CAR T and CAR NK cell cancer therapies" Dagher O, Dagher OK, Posey AD Jr. Nat Immunol. 2023-11-17/Dec. 

 今回のCAR-NK細胞は、抗CD19および抗BCMAバイシストロニックCARを採用したことで、病理学的に関連する幅広いB細胞を持つ異質な患者集団をカバーできる特徴も備えている。

CAR-NK細胞"QN-139b"の導出 [論文の図1参照]
  • はじめに、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)に対し、シトシン塩基編集技術(CBE)とCRISPR/Cas9システムを用いた部位特異的インテグレーションを用いて遺伝子改変を行い、それぞれ然るべきノックアウト改変とノックイン改変 [***] を導入する。
  • 遺伝子改変が成功したクローンをマスターセルバンク(MCB)として選別し、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)存在下で培養することで多能性を維持する。
  • QN-139bのスケーラブルな生産を実現するために、hiPSC MCBをNK細胞に分化させる。
 [***]
  • QN-139bの設計では、宿主T細胞による認識を防ぐためにB2MとCIITAの遺伝子ノックアウトする。
  • 宿主NK細胞による活性化を最小限に抑えるためにCD16をノックアウトし、ヒト白血球抗原(HLA)-EとHLA-Gをノックインする。
  • 分化したNK細胞の活性化と持続性を高めるためにIL-2RFを発現し、必要に応じて抗EGFR抗体を使用して枯渇させるための安全スイッチとして総上皮成長因子受容体(tEGFR)を発現するように設計。
  • 細胞にCD19とBCMAを標的とするCARを接種。
[出典]
  • 論文 "An iPSC-derived CD19/BCMA CAR-NK therapy in a patient with systemic sclerosis" Wang X, Zhang Y, Jin Y, Dai L [..] Xu H. Cell 2025-06-24. https://doi.org/10.1016/j.cell.2025.05.038 [著者所属] Naval Medical U (中国), Sun Yat-Sen U, Qihangene Biotech Co Ltd, Wenzhou Medical U, Henan U Science and Technology, Shanghai Tenth People’s Hospital, Complete Omics (HangZhou) Inc, Tsinghua U, U CAS, U Chicago (米国)
  • ニュース "Turbocharged ‘killer’ cells show promise for autoimmune disease" Ledford H. Nature 2025-07-07. https://doi.org/10.1038/d41586-025-02096-7
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