crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] CASP (Critical Assessment of protein Structure Prediction):ウィキペディア タンパク質構造予測精密評価;ウエッブサイト https://www.predictioncenter.org/index.cgi

 CASPへの米国NIHからの資金援助が枯渇し、助成金を監督するUC Davis(カリフォルニア大学デービス校)からの緊急支援も8月8日に尽きる。これまでのところNIHは助成金更新の申請に対して無反応であり、Scienceからの複数回のコメント要請にも無回答である。

 CASPは世界で最も成功し、オープンで信頼されている科学コンテストであり、2024年ノーベル化学賞を受賞したRosettaFoldやGoogle DeepMindのAlphaFoldといったAIプログラムの創出を促すに至った。また、CASPの成功に想を得て仮想細胞構築のコンテスト(Virtual Cell Competition)が企画されるなど、異分野にも波及効果を及ぼしていた。

 CASPはアミノ酸配列からタンパク質の3次元構造を予測するコンテストである。主催者は、X線回折などを利用して実験的にタンパク質構造を研究しているグループの協力のもとに、近く構造が解明されると予想されるタンパク質のアミノ酸配列を提示し、タンパク質構造の計算機モデルを開発している研究者が予測精度を競う。1994年のCASP1では、最も困難とされたタンパク質に対する各種の計算機モデルの予測結果はほぼランダムであったが、2020年のCASP14でAlphaFoldが登場し、構造予測の精度が劇的に向上し、2024年のCASP16では、計算機モデルは最も難しいタンパク質群において95%近くの成功率を達成した。

 2024年のCASP16では、計算機モデルを研究開発している209のグループが、個々のタンパク質の構造だけでなく、RNA分子の3D構造、タンパク質アンサンブル、タンパク質に結合した薬物などの分子、そしていわゆる無秩序タンパク質が取り得る様々な形状の解明に取り組み、生体分子構造予測の新たな展開が始まろうとしていた。

 NIHの資金は、UC Davisでの人材や設備だけでなく、課題のタンパク質を設定する数百の実験グループ、各コンペティションの焦点を決定するパネル、モデリング・グループ、評価者、そして各コンペティション後に優勝者を発表し、成果に関する教訓を共有する会議など全般ををカバーしている。こうしたCASPエコシステムが一旦破壊された場合、それを再構築するのは容易ではない。

[出典] SCIENCEINSIDER "Exclusive: Famed protein structure competition nears end as NIH grant money runs out" Service RF. Science. 2025-07-02. https://doi.org/10.1126/science.z8z2rnz
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット