2025-07-24 ブログ記事を「CRISPRエピゲノムエディターによる免疫細胞の運命と炎症の調節から見えてくること」から「CRISPRエピゲノムエディターにより免疫応答と腫瘍増殖を制御する」へと改訂
2025-07-21 初稿
免疫細胞の分化と活性化は、広範囲にわたるDNAメチル化(DNA methylation: DNAm)の変化と関連しているが、これらの変化と細胞運命決定への影響との因果関係は、未だ十分に解明されていない。バルセロナを拠点とするホセ・カレーラス白血病研究所のEpigenetic Control of Haematopoiesis Groupを主とする研究チームは今回、ヒト免疫細胞における遺伝子調節領域におけるDNAmと遺伝子発現の関係をゲノムワイド解析により検討した。
免疫細胞の分化と活性化は、広範囲にわたるDNAメチル化(DNA methylation: DNAm)の変化と関連しているが、これらの変化と細胞運命決定への影響との因果関係は、未だ十分に解明されていない。バルセロナを拠点とするホセ・カレーラス白血病研究所のEpigenetic Control of Haematopoiesis Groupを主とする研究チームは今回、ヒト免疫細胞における遺伝子調節領域におけるDNAmと遺伝子発現の関係をゲノムワイド解析により検討した。
具体的には、ヒト白血病B細胞を非腫瘍形成性マクロファージへとリプログラムする過程において、遺伝子調節領域におけるDNAmの変化が遺伝子発現に及ぼす影響について検討した [*1]。これらのDNAm変化は、IL1RN 遺伝子プロモーターにおける変化を含め、ヒト初代培養B細胞と初代培養マクロファージを比較した際に観察される変化と類似していた。
そこで、細胞モデルにおいてCRISPRエピゲノムエディター(dCas9-TET1およびdCas9-DNMT3A)を用いることで、IL1RN プロモーターのDNAm状態を正確に変化させ、関連する免疫細胞表現型への影響を評価した。
その結果、IL1RN プロモーター領域のDNAm状態をエピゲノムエディターで変化させるだけで、ヒト骨髄細胞の運命が変わり、ひいては、炎症性および病原性刺激に対する細胞応答が変化し、細胞が改変された炎症性サイトカインを産生し、実験モデルにおいて腫瘍の増殖が調節されることが実証された [*2]。すなわち、DNAの化学修飾(ここではメチル化)を介して、免疫系を制御することが可能なことが、実証された。
今後、個々の遺伝子の活性をCRISPRエピゲノムエディターでオンオフすることによる新たな癌免疫療法が展開していくことが期待される。
[*1]
骨髄細胞の運命決定過程におけるDNAmの動態を解明するため、研究チームはCCAAT/エンハンサー結合タンパク質α(C/EBPα)を高効率かつ均一に活性化させることで、β-エストラジオール誘導性のC/EBPα(BlaER細胞)を含むヒトB白血病細胞を、
非腫瘍形成性の誘導マクロファージ(non-tumorigenic induced macrophages: iMac)へと転換する手法を選択した [Fig. 1の一部引用右図の A 上段を参照]。このプロトコルを用いて生成されたiMacは、完全な貪食能とインフラマソーム能を有するため、天然のiMacと非常によく似ている。
非腫瘍形成性の誘導マクロファージ(non-tumorigenic induced macrophages: iMac)へと転換する手法を選択した [Fig. 1の一部引用右図の A 上段を参照]。このプロトコルを用いて生成されたiMacは、完全な貪食能とインフラマソーム能を有するため、天然のiMacと非常によく似ている。[*2] 実験結果の詳細例
- 全ゲノムバイサルファイトシーケンシング(WGBS) から、ヒトB細胞からマクロファージへのリプログラミング中に骨髄関連遺伝子調節因子 (gene regulatory elements: GREs) の脱メチル化が起こることがあきらかにされた。
- 統合エピゲノムプロファイリングにより、IL1RN プロモーターがトランスディファレンテーション中のDNAm発現相関を示すトップイベントであることが明らかになった。
- dCas9-TET1によるIL1RN プロモーターの脱メチル化は、その遺伝子の再活性化につながるのに十分である。
- dCas9-DNMT3Aを介したIL1RN プロモーターの過剰メチル化は、ヒト骨髄細胞の運命獲得を阻害し、貪食能を増強する。
- shRNAを介したIL1RN の枯渇は一次骨髄細胞の運命決定を阻害し、分化転換表現型を変化させる。
- IL1RN DNAm編集はIL-1βに対する後期応答を変化させ、p65/NF-κB活性化よりもIFN経路を強化する。
- IL1RNプロモーターのメチル化は炎症性および病原性刺激に対するマクロファージサイトカイン応答をリワイヤリングする。
[関連論文とcrisp_bio記事]
- 2024-02-11 [レビュー] CRISPR技術によるゲノム編集, エピゲノム編集, およびトランスクリプトーム編集.
- 2023-08-19 CRISPR/dCas9によるDNAメチル化編集の結果がヒトの造血の過程で維持され、免疫細胞の分化に影響する.
- 標的DNAm編集によって免疫細胞における遺伝子発現を安定的に抑制:"Inheritable Silencing of Endogenous Genes by Hit-and-Run Targeted Epigenetic Editing" Amabile A, Migliara A [..] Naldini L, Lombardo A. Cell. 2016-09-22: "Hit-and-run delivery of combinations of engineered transcriptional repressors (ETRs) [CRISPRiと同等]"
[出典] "Modulating immune cell fate and inflammation through CRISPR-mediated DNA methylation editing" Valcárcel G [..] Sardina JL. Sci Adv. 2025-07-16/18. https://doi.org/10.1126/sciadv.adt1644 [著者所属] Josep Carreras Leukaemia Research Institute (スペイン), Universitat de Barcelona, East China Normal University (中国)
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