中国薬科大学と南京大学の研究チームは2020年の先行研究 [*] で、ラップエンドヌクレアーゼ1(flap endonuclease 1: FEN1)に、ガイドとしてヘアピンDNAプローブ(hpDNA)を組み合わせたシステム(HpSGNシステム)を開発し、CRISPR-Casヌクレアーゼや、TnpB、IscB、Fanzorを含む新しいクラスのRNA誘導ヌクレアーゼと異なり、PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列やTAM配列(トランシポゾン関連モチーフ)の制約を受けることなくDNAとRNAを編集可能なことを示した。その後、このFEN1-hpDNAは、ウイルス除去 [Tian K et al., Microb Biotechnol 2022] や肝線維症の効果的な改善 [Gu J et al., Biomaterials 2023] に応用されており、遺伝子治療への応用の可能性を示している。
FEN1-hpDNAはDNA誘導型のDNA/RNAエディターであったが、研究チームはCRISPR-CasシステムをベースとするRNA誘導型RNAエディターの発展に刺激され、2024年に [*]RNAプローブにガイドされる高精度なRNAヌクレアーゼの開発に取り組み、RNAを標的とするTagTth-hpRNAを開発した。TagTthは、Thermus aquaticus と Thermus thermophilus のDNAポリメラーゼ、TaqPolとTthPolに由来し、TthPolからのドメインをTagPolからの2つのドメインで挟んだ構成であるが、832アミノ酸と小型である。
[*] "TaqTth-hpRNA: a novel compact RNA-targeting tool for specific silencing of pathogenic mRNA" Xu C, Cao J, Qiang H [..] Sima J, Guo Y, Xu S. Genome Biol. 2024-07-07.
[*] "TaqTth-hpRNA: a novel compact RNA-targeting tool for specific silencing of pathogenic mRNA" Xu C, Cao J, Qiang H [..] Sima J, Guo Y, Xu S. Genome Biol. 2024-07-07.
https://doi.org/10.1186/s13059-024-03326-3
研究チームはこのTagTth-hpRNAを利用して、アルツハイマー病モデルにおいて、野生型野生型APP mRNAを変化させることなく、変異型APPswemRNAをサイレンシングできることを実証した。特に、TaqTthはコンパクトなため、単一のAAVベクターでAPOE2過剰発現と組み合わせることが可能になり、病態をより強力に抑制することに成功した。
今回、研究チームはTagTth-hpRNAによるDNA編集が可能なことを示した。
研究チームは、組み換えTaqTthが、DNAとRNAの両方の標的に対するヌクレアーゼであるFEN1に類似した5'ヌクレアーゼドメインを有することから、TaqTth-hpRNAも標的DNAを切断できると仮説を立て、TaqTth-hpRNAが大腸菌と哺乳類細胞のゲノムDNAを切断する能力を検証した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。
In vitro生化学的試験では、TaqTth-hpRNAは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)のような厳密な配列モチーフを含まない人工合成一本鎖DNAを効率的に切断した。また、大腸菌のゲノムDNAを約80%の効率で切断した。哺乳類細胞におけるゲノムDNAのTaqTth-hpRNAによる切断では、MMEJ (microhomology-mediated end joining / マイクロホモロジー媒介末端結合) を介して、大断片の削除が実現された。さらに、この切断が標的領域のミスマッチに対して敏感であり、APPwt遺伝子座位を破壊することなく、アルツハイマー病におけるAPPlon変異を特異的に破壊することを見出した。特筆すべきは、APPlon配列はAPPwt配列とわずか1塩基しか異なっていないことである。
TaqTth-hpRNAはサイズが小さく、CRISPR系のエディターと異なりPAM配列の制限を受けずに、高い特異性を発揮し、大きな欠失も誘導可能というを特徴から、将来、常染色体顕性疾患の治療戦略として期待される。
[出典] "DNA large fragment deleting by compact, sequence-motif-free and specific TaqTth-hpRNA assisted with the microhomology-mediated end joining pathway" Liu Y, Weng Z, Zhai Z, Xu Z [..] Guo Y, Xu S. Nucleic Acids Res. 2025-07-31/08-12. https://doi.org/10.1093/nar/gkaf723 [著者所属] China Pharmaceutical University, Nanjing University
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[*] 2020年のHpSGN論文:フラップエンドヌクレアーゼ1とヘアピンDNAプローブを用いた、配列制限のないDNAおよびRNA編集
南京大学と中国薬科大学にフロリダ国際大学が加わった研究チームは今回、フラップエンドヌクレアーゼ1(flap endonuclease 1: FEN1)に、ガイドDNAとして線状DNAに換えてヘアピンDNAプローブ(hpDNA)を組み合わせたシステム(HpSGNシステム)により、標的部位の塩基配列の並びには左右されないDNAおよびRNA編集が可能なことを実証した。
HpSGNシステムはコンパクトなため、生体内デリバリーアプリケーションに理想的である。In vitro生化学試験では、HpSGNシステムは、以前に報告したSGNシステムと比較して、ssDNA基質を切断するために必要なヌクレアーゼの量が約40分の1であることが示された。また、HpSGNシステムはin vitroにおいて様々なRNA標的を効率的に切断できることも実証した。
HpSGNシステムは、細菌細胞とヒト細胞においてそれぞれ約40%と約20%の効率でゲノムDNAを切断し、ヒト細胞において特定のmRNAを約25%のレベルでノックダウンした。さらに、HpSGNシステムは、in vitroおよびin vivoの両方において、ヘアピンに隣接する位置にある1塩基のミスマッチに対して感度を示した。
[出典] “DNA and RNA editing without sequence limitation using the flap endonuclease 1 guided by hairpin DNA probes” Tian K, Guo Y, Zhou B [..] Wang X, Zhou G, Wei L, Xu S. Nucleic Acids Res. 2020-11-18. https://doi.org/10.1093/nar/gkaa843 [著者所属] China Pharmaceutical University (中国), Nanjing University, Florida International University (米国)
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[2016年のSGN論文]:標的配列の制限を受けないDNA編集のための新たな代替ツール:構造誘導型ヌクレアーゼ。
[2016年のSGN論文]:標的配列の制限を受けないDNA編集のための新たな代替ツール:構造誘導型ヌクレアーゼ。
南京大学を主とする中国の研究チームが、3'フラップ構造を認識するフラップエンドヌクレアーゼ-1(FEN-1)と、DNA鎖を切断するFok Iの切断ドメイン(Fn1)から構成される構造誘導型エンドヌクレアーゼ(SGN)を設計・実装した。
- SGNは、ガイドDNA(gDNA)と標的DNAとの間に形成される3'フラップ構造に基づいて標的DNAを認識し、Fn1の二量体形成を介して標的を切断する。
- SGNが一対のgDNAに誘導され、ゼブラフィッシュ胚ゲノム中のトランスジェニックレポーター遺伝子と内因性遺伝子を切断することが実証された。
[出典] CRISPR関連文献メモ_2016/09/22 [第1項] 新ゲノム編集技術:構造をガイドとするエンドヌクレアーゼ(structure-guided endonuclease, SGN)を開発;Research Highlight "DNA-guided genome editing using structure-guided endonucleases" Varshney GK, Burgess SM, Genome Biol. 2016-09-15. [著者所属] Functional and Chemical Genomics Program (Oklahoma Medical Research Foundation), National Human Genome Research Institute (NIH);論文 "An alternative novel tool for DNA editing without target sequence limitation: the structure-guided nuclease" Xu S, Can S, Zhou B, Yue Y [..] Zhu M, Zhao Q, Zhou G. Genome Biology. 2016-09-15. [著者所属] Nanjing University, Soochow University
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