crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 CRISPR-Cas9システムは、その高い効率性と汎用性からゲノム編集ツールとして広く採用されており、様々な治療戦略の開発に貢献している。しかし、オフターゲット効果や転座・逆位といった大規模な染色体再編成などの安全性への懸念から、臨床応用は依然として制限されている。

 近年、一方向性DNA分解活性を持つClass 1 CRISPRエフェクター複合体であるCRISPR-Cas3システムが、オフターゲット効果を低減した潜在的な代替手段として注目を集めている。国産の新規ゲノム編集技術CRISPR-Cas3を開発し、ヒト細胞療法や遺伝子治療への応用研究を行っている真下知士東大医科研教授が率いる研究チームは今回、CRISPR-Cas3システムをヒトT細胞に適用し、臨床的に関連する2つの遺伝子、T細胞受容体α定常領域遺伝子(TRAC )とβ2ミクログロブリン遺伝子(B2M )の破壊に成功したことをbioRxiv に投稿した。

 これらの遺伝子欠失は、移植片対宿主病(GVHD)リスクと宿主免疫拒絶の双方の減少と関連していた。注目すべきことに、CRISPR-Cas3で編集された細胞では、CRISPR-Cas9で観察されたオフターゲット効果とは対照的に、オフターゲット変異が検出されなかった。さらに、CRISPR-Cas3を用いてTRAC またはB2M を欠失させたCAR-T細胞は、腫瘍細胞に対する抗原特異的な細胞傷害性を維持しながら、アロ抗原反応性が低下した。

 これらの結果は、CRISPR-Cas3がT細胞工学におけるゲノム編集のためのより安全で有望なプラットフォームを提供し、次世代の同種異系T細胞療法の開発への応用の可能性を示唆している。

[CRISPR-Cas3関連crisp_bio記事]
[出典] "Efficient gene disruption with CRISPR-Cas3 in human T cells" Fujii T [..] Mashimo T. bioRxiv. 2025-08-08 [preprint]. https://doi.org/10.1101/2025.08.06.668737 [所属機関] 東大医科研, 山口大(医学部, 細胞デザイン医科学研), 理研 Spring-8
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