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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 これまでに血液、肝臓、眼の疾患を治療するための遺伝子編集療法は現実になっている。20255月には、研究者たちは、致命的な肝疾患を患うKJという名の男児を、オーダーメイドの遺伝子編集療法で治療し、驚くべき成功を収めたと報告した [#1]。しかし、脳内での遺伝子編集には脳に特有な関門がある。肝臓の場合は、肝臓に自然に蓄積される脂質粒子を利用して非侵襲的に遺伝子エディターを送り込むことができる。脳の場合は、脳を保護している血液脳関門(Blood-Brain Barrier: BBB)を何とか透過させるか、侵襲的に局所へ注入する必要がある。

 その中で7月には、塩基エディター(BE)とプライムエディター(PE)を開発したDavid R. Liu教授らが、脳内でのPEによる遺伝子編集を介して、小児交互性片麻痺モデルマウスの治療を実現した [#2]Liuグループは、BEを利用して、ハンチントン病とヒトにおけるフリードライヒ運動失調症という2つの神経疾患を引き起こす変異の修正にも取り組んでいる [#3]。また、上海交通大学医学院のZi-Long Qiu教授らが、自閉症スペクトラム障害モデルマウスの行動異常を正常化させる生体内全脳塩基編集を実現させた [#4]

 これまでの創薬の歴史の中でよく認識されているように、マウスでの成功からヒト臨床試験に至るまでには、長い道のりであるが、Liu教授は、今後数年以内に、小児交互性片麻痺患者を対象とした研究を開始するために必要な残りの実験に着手したいと考えている。また、Qiu教授は、チームが約5年後にはレット症候群の患者を対象にBE療法を試す準備が整うことを期待している。

 遺伝子エディターを脳に送り込むにあたって、両チームは臨床試験でアデノ随伴ウイルス9AAV9)と呼ばれるウイルス利用することを想定している。このウイルスは脳細胞に感染し、血液脳関門をある程度通過することができる。しかし、AAV9にはリスクが伴いう。高用量のウイルスは致命的な免疫反応を引き起こす可能性があるため、より低用量で使用できる改良型ウイルスの開発 [#5]や、ウイルスに依存しない送達法の研究が進められている。

[#] 引用crisp_bio記事

  1. [20250619更新] 患者 (新生児) のゲノム配列決定から6ヶ月でカスタマイズした塩基エディターの脂質ナノ粒子製剤による希少遺伝性疾患治療例が報告された(世界初)
  2. 2025-07-22 生体内 (脳内) プライム編集により小児交互性片麻痺モデルマウスの治療に成功
  3. 2025-05-31 塩基エディターを利用して, ハンチントン病やフリードライヒ運動失調症を引き起こすトリプレットリピートの伸長を, 患者の細胞とマウスにおいて低減
  4. 2023-12-04 自閉症スペクトラム障害モデルマウスの行動異常を正常化させる全脳in vivo塩基編集
  5. 2024-05-21 ヒト・トランスフェリン受容体に結合するように再プログラムされたAAVカプシドが脳全域への遺伝子導入を媒介する

[出典] NEWS “Brain editing now ‘closer to reality’: the gene-altering tools tackling deadly disorders” Ledford H. Nature 2025-08-14. https://doi.org/10.1038/d41586-025-02578-8 

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