crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 生体内部位特異的変異誘発は、特定のアレルが通常のゲノム環境下においてどのような効果をもたらすかを試験するための強力な遺伝学的ツールである。出芽酵母 Saccharomyces cerevisiaeには、部位特異的変異誘発のための古典的なツールが利用可能であったが、近年は、CRISPR-Casシステムによる「標的部位での切断」と「修復テンプレートを組み合わせた」相同組換えを介して、目的の編集を導入する手法が採られるようになった。しかし、このアプローチが有効なのは、外部から栄養素を供給しなくても生育する完全に原栄養性の酵母株に限定されており、また、比較的効率の低い短いgRNAのクローニングに依存している。

 アーカンソー大学のJeffrey A. Lewis准教授が率いる研究チームは今回、gRNAと相同修復テンプレートを単一のオリゴヌクレオチド上でシスに結合することで、このプロセスを簡素化することを試みた。さらに、大腸菌レトロン(EcRT)を用いて、生体内で修復テンプレートを多重コピー一本鎖(multi-copy single-stranded: msDNAとして増幅するという新たな手法の活用を試みた。msDNAは、相同組換えの効率的なテンプレートとして期待される。

  CRISPEY*をベースに、Cas9-EcRTを発現するプラスミドセットを作成し、gRNA修復テンプレートプラスミドとの共形質転換を1ステップで実現するように改良した。このプラスミドセットには、異なる抗生物質(NatHygKan)または栄養要求性(HIS3URA3)の選択マーカーが含まれており、完全に原栄養性の野生酵母株の編集を可能にした。

 従来のガラクトース誘導に加えて、ガラクトースではあまり生育しない酵母株での編集を容易にするために、各プラスミドのβ-エストラジオール誘導バージョンも生成した。

 プラスミドベースのシステムは、最小限のステップ数と時間で、点変異に対して95%以上の編集効率、マーカーレス欠失に対して50%以上の編集効率を実現した。このシステムの使用方法については、詳細なステップバイステップガイドをご用意されている。

[*] CRISPRメモ_2018/09/24 [1] CRISPEY:超並列精密ゲノム編集による機能ゲノミクス

[出典]Improved vectors for retron-mediated CRISPR-Cas9 genome editing in Saccharomyces cerevisiae ” Stuecker TN [..] Lewis JA. G3 (Bethesda). 2025-08-04. https://doi.org/10.1093/g3journal/jkaf175 [所属機関] University of Arkansas, National Human Genome Research Institute/NIHグラフィカルアブストラクト

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット