crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 ミツバチは重要な農作物の受粉媒介者であるが、農業の集約化と気候変動の影響で、花粉飢餓(pollen starvation)に直面するケースが増えている []。花粉不足の時期が頻繁に起こり、高密度飼育の環境下ではミツバチの群れが弱体化し、多くの場合、死滅に至る。養蜂家はミツバチの群れに花粉代替物を与えるが、これらの飼料には花粉に含まれる必須ステロールが含まれていないため、幼虫の生産を維持できない状況が続いていた。

 今回、オックスフォード大学、グリニッジ大学、キューガーデンおよびノボノルディスク財団バイオサステナビリティセンター(TUD)の研究者達が世界の食糧安全保障に広範な影響を及ぼすミツバチの栄養に関する技術的革新を起こした。

 まず、ミツバチの組織中に存在するステロールの量と割合を測定し、ミツバチの組織の大部分を一貫して占める6つのステロール化合物、Sterolすなわち24-メチレンコレステロール、カンペステロール、イソフコステロール、β-シトステロール、コレステロール、デスモステロールを特定した [Fig. 1引用右図 b 参照]

 次に、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術を用いて油性酵母 Yarrowia lipolytica 株を改変して、一連の必須ステロールの持続可能かつ低コストな生産を実現し、この酵母バイオマスを粉末化して栄養的に完全な飼料に組み込んだ。

 この飼料のみを与えられたミツバチの群れは、適切なステロールを含まない飼料を与えられたミツバチの群れよりも、幼虫の飼育期間が有意に長くなった。

 この方法を用いてステロールサプリメントを花粉代替物に組み込むことで、ミツバチのコロニーは花粉がなくても幼虫を産むことができるようになる。

 ひいては、天然の花資源をさらに枯渇させることなく、天然の花資源をめぐるミツバチ種間の競争を軽減し、野生ミツバチの個体数の減少を食い止める効果を、期待できる。

[] ミツバチのような花粉媒介昆虫は、世界の主要作物の70%以上の生産に貢献している。しかし、栄養不足、気候変動、ダニの蔓延、ウイルス性疾患、農薬への曝露などが重なり、ミツバチは減少の一途を辿っており、食料安全保障と生物多様性にとって重大な脅威が来ようとしている。例えば、過去10年間、米国における商業用ミツバチのコロニーの年間損失は、通常4050%の範囲で推移しており、2025年には6070%に達する可能性がある。このサプリメントば大規模な圃場試験を経て市場に提供される日が待たれる。

[出典] 

[] Review “Bee declines driven by combined stress from parasites, pesticides, and lack of flowers” Goulson D, Micholls E, Botias C, Rotheray EL. Science. 2025-02-26/03-27. https://doi.org/ 10.1126/science.1255957

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット