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2025-12-03 Nature Reviews Drug Discovery誌のResearch Highlight記事へのリンクを追記:"Designing error-free prime editors" Crunkhorn S. Nat Rev Drug Discov. 2025-10-22/Dec. https://doi.org/10.1038/d41573-025-00172-1
2025-10-18 Nature Biotechnology 誌のResearch Highlight記事へのリンクを追記:"Engineering the Cas9 nuclease to enhance prime editing precision" Despond A. Nat Biotechnol. 2025-10-14.
https://doi.org/10.1038/s41587-025-02876-6
2025-09-21 初稿
[注] 極めて高精度なPE(very-precise Prime Editor: vPE
 プライムエディター(PE)は、二本鎖DNA(dsDNA)を切断することなく、dsDNAのうち一本のDNA鎖を切断(ニック)し、それによって新たに生成された3'末端に、あらかじめPE内に格納しておいた配列を新たに書き込むことで、Prime editingプログラムされたゲノム改変を実現する [Wikipedia からの引用右図の 4 参照]。ニッキングによって生成された新たな3'鎖は、編集を実現するために「挿入すべき配列」と競合する5'鎖を置換する必要があるが、競合する5'鎖を保持するという内在する傾向がその効率を低下させ、挿入欠失(InDel)エラーを引き起こす可能性がある。
 MITの研究チームは今回、競合する5'鎖の不安定化と一致するニック末端の分解が、ニックの位置を緩和するCas9ニッカーゼ変異によって促進されることを発見した。このメカニズムを利用して、挿入欠失エラーが著しく低い効率的なPEを作出した。研究チームはこのエラー抑制戦略に最新の効率向上アーキテクチャを組み合わせて、次世代プライムエディター(vPE)を設計・作出した。従来のPEと比較して、vPEは同等の効率性を備えながら、挿入欠失エラーを最高で60分の1にまで低減し、"目的とする編集":"挿入欠失比"を最大543:1まで高めた。
[詳細]
 PEは、逆転写酵素に融合された Cas9 ニッカーゼ (Cas9n) と、ゲノム標的配列と意図する編集の両方をコードする延長ガイドである RNA Prime Editor(pegRNA) で構成されている [右図モデル図参照]。この投稿記事の冒頭にあるように、ニックの入った 3′ DNA 末端は、「挿入すべき配列」をコードしている pegRNA テンプレートにアニールするために解放され、逆転写酵素がプライミングされてテンプレート配列を 3′ DNA 末端の延長部分に書き込む。この編集された新しい 3′ 鎖は、競合する 5′ 鎖を置き換えて、意図した編集が実現する。このプロセスを経て、PEは、置換、挿入、欠失など、さまざまな編集タイプに適応できる。
 PEは、効率を高めるために、細胞内ミスマッチ修復(MMR)の阻害、pegRNAの安定化、逆転写酵素ドメインの改変など、多大な努力がなされてきた。これらの進歩により、非常に効果的で汎用性の高いプライム編集システムが実現した。
 残された重要な課題は、PEの副産物として生じるエラーの排除である。これらのエラーは、標的細胞の一部において、意図された編集に伴ってあるいは代わって生成される挿入欠失変異であり、予測不可能で有害な可能性のあるDNA配列をもたらす。これまでの研究で挿入欠失エラー形成の主な要因は特定されたが、そのメカニズムは完全には解明されていない。
 PEによる編集過程において、編集された3'末端鎖は相補鎖とはミスマッチであるため、競合する5'末端鎖を置換するのに不利になる [論文Fig. 1 a 参照]研究チームは、編集された3'末端鎖のアニーリングに対するこのバイアスが編集効率を制限し、エラーを促進する可能性があると推論した [論文Fig. 1 b参照]ニックの入ったDNA基質の3'末端は結合したCas9複合体から逃れることができるが、5'末端は安定して結合したままであることが知られている。研究チームは、5'末端の不安定な配置が、その分解を可能にする可能性があるという仮説を立てた。
 研究チームは最近、Cas9-DNAインターフェースの変異がニックの位置付けを緩和できることを発見していた [crisp_bio 20230309更新参照]。この発見を契機に、PEによって形成される競合する5'鎖が不安定化するかどうかを今回探究した。
 ニック末端の分解を誘導するCas9ニックの位置付けを緩和する変異を検討し、これらの変異を用いてPEを設計した結果、その緩和が挿入欠失エラーの発生に予想外に大きな影響を及ぼすことを発見した。それを受けて、合理的な設計により、挿入欠失エラーをほとんど発生させない効率的なPE, vPE、至った。
[出典] "Engineered prime editors with minimal genomic errors" Chauhan VP, Sharp PA, Langer R. Nature 2025-09-17. https://doi.org/10.1038/s41586-025-09537-3 [所属] MIT (Koch Institute for Integrative Cancer Research, Department of Biology, Department of Chemical Engineering)
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