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 CRISPRを介した転写の活性化と抑制(CRISPRaとCRISPRi)は、遺伝子発現を制御するための強力かつプログラム可能な手法である。細菌においてもCRISPRiは確立されたが、一方で、細菌内在の活性化ドメインが限られていることから、細菌におけるCRISPRaは期待通りには機能せず、ひいては、抑制と活性化の同時制御は実現されていない。また、CRISPRシステムにはプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)により標的可能な範囲が制限されるという課題がつきまとっている。
 韓国の研究チームは今回、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を緩和したCas9の標的可能範囲を拡大し(dxCas9)、リンカーを介して、改変した大腸菌のタンパク質(cAMP受容体タンパク質: CRP)を組み合わせることで(dxCas9-CRPシステム)、CRISPRaを大幅に強化し、ひいては、CRISPRaとCRISPRiの効率的な同時制御を実現した [Figure 1引用右下図の B 参照]dual-mode CRISPRa:i Figure 1このdxCas9-CRPシステムは、上流制御領域の強力な活性化と、コード配列の効果的な抑制を示し、標的を定めたプログラム可能な遺伝子制御を可能にした [Figure 1引用右図の A 参照 ]
  • CRPドメインとリンカーを体系的に最適することで、遺伝子活性化実験では発現量が最大4.9倍まで増加し、抑制実験では最大83%抑制した。
  • デュアル蛍光レポーターを介して、dxCas9-CRPシステムが複数の遺伝子を同時に制御できることを確認した上で、一方の遺伝子を8.6倍活性化すると同時に、もう一方の遺伝子を90%抑制することに成功した 。
  • さらに、プールされたガイドRNAライブラリーを用いて、dxCas9-CRPシステムを用いて、ゲノムスケールでの活性化と抑制を協調的に行うことで [Figure 1引用右上図の D 参照]抗がん作用を示す紫色の色素ビオラセイン(violacein)生産を増加させ、生産量を大幅に増加させる重要な制御標的の同定にも成功した。タンパク質生産を助ける「rluC」遺伝子を活性化すると生産量が2.9倍、細胞分裂を助ける「ftsA」遺伝子を不活性化すると生産量が3.0倍になり、さらに、両方の遺伝子を同時に制御することで、生産量は3.7倍にまで増加した。
 こうして、このデュアルモードCRISPRa/iシステムは、細菌の代謝経路の再配線の可能性を高め、幅広いバイオテクノロジー用途において正確かつ柔軟な制御を可能にすることが、実証された。
[出典] 
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