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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 改変T細胞を用いた養子細胞移植(adoptive cell transfer : ACT)はB細胞悪性腫瘍に対しては有効であるが、固形腫瘍に対しては免疫抑制性の腫瘍微小環境(TME)のために効果が不十分である。FASLおよびTGFβはTMEにおけるT細胞機能不全の重要なメディエーターであり、これらの受容体のドミナントネガティブ(dn)型をT細胞で過剰発現させると、固形腫瘍モデルにおける抗腫瘍効果が向上する。しかし、外因性遺伝子の発現に換えて内因性遺伝子を直接標的とするアプローチは、多重編集がより容易であり、野生型アレルとの競合を低減できると考えられる。
 ミネソタ大学の研究者達を主とする米国の研究チームは今回、初代培養ヒトT細胞において塩基編集(BE)を介して、自然発生するdn型FASおよびTGFβR2変異を導入するアプローチを試みた。 
 In vitro生存増殖アッセイでは、BE改変T細胞がFASおよびTGFβシグナル伝達によるアポトーシス促進および増殖抑制効果に抵抗性を示すことが実証された。BEを介して導入されたdn TGFβR2またはdn FASを有するCAR-T細胞は細胞傷害性が向上し、dn TGFβR2 CAR-T細胞は対照群と比較して持続性が向上し、疲弊の表現型マーカーの発現が低下した。さらに、BE改変dn CAR-T細胞は、レンチウイルス改変cDNA過剰発現細胞よりも、いくつかの機能アッセイにおいて優れた性能を示した。
 BEの効率性とマルチプレックス編集への適応性を考慮すると、本アプローチは固形腫瘍におけるT細胞機能不全を克服する戦略として有力である。
[出典] "Installation of Dominant-Negative Mutations in FAS and TGFβR2 via Base Editing in Primary T Cells" Wick BJ [..] Webber BR, Moriarity BS. (bioRxiv 2025-09-16) Mol Ther Oncol 2025-09-23. https://doi.org/10.1016/j.omton.2025.201063 [所属] University of Minnesota (US), University of Washington, Fred Hutchinson Cancer Research Center;グラフィカルアブストラクト参照
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