PiggyBacトランスポザーゼは、多様な細胞環境において大量のDNAカーゴを統合する能力を持つことから、汎用性の高い遺伝子挿入のプラットフォームとなっている。また、活性なPiggyBacエレメントが昆虫やコウモリのゲノムにおいて同定されている。
PiggyBacの多様性は従来、そうした生物資源の探索(バイオプロスペクティング/bioprospecting)によって広げられてきた。一方で最近、タンパク質設計に適用される生成AI(generative AI)の手法の進歩により、天然の多様性を拡張することで、自然界には見られない機能的な配列を生成できることが示された。例えば、新しいフォールドを持つ活性合成セリン加水分解酵素 [#1] や、自然界には存在しないが優れた遺伝子編集性能を示す CRISPR-Cas9 [#2] が生成された。
Integra Therapeuticsを主とするスペインの研究チームは今回、PiggyBacの多様性を、バイオプロスペクティングとタンパク質言語モデル(protein language mode: PLM)によって拡大・検証し、これまでにない高性能なPiggyBacを生成するに至った。
まず、真核生物のトランスポゾンのORFsから活性なPiggyBac配列を抽出するマイニング [*] を介してPiggyBacの多様性を2桁拡大し、大きく異なるPiggyBac配列のサブセットを実験的に検証し、互いに最大30%の配列相同性を持つ10種類の活性トランスポザーゼを同定した。
続いて、広く利用されている実験室進化で作出された高活性PiggyBac(HyPB)トランスポザーゼ [Yusa et al., PNAS 2011] の「メガ活性」合成バリアントを、微調整されたpLLMであるProgen2 [Nijkamp et al., Cell Syst 2023] を用いて作出した。その上で、これらのPiggyBacオーソログが、初代T細胞工学やCas9誘導性トランスポザーゼ支援による組み込みといった重要な遺伝子編集のコンテクストに適用可能であることを実証した。
[*] PiggyBacデータマイニングプラットフォーム
NCBIデータベース由来の真核生物31,565ゲノムおよびDfam(20,638 PiggyBac配列)で入手可能なすべての真核生物ゲノムアセンブリを検索し、合計273,643のPiggyBacトランスポゾンORFとそのDNA配列を同定した。次に、活性トランスポゾンと、宿主によって利用され転位活性を失ったトランスポザーゼ由来タンパク質を区別するために、DNAの切除と組み込みに重要であることが報告されている一連のモチーフ(RNase H様ドメイン、システインリッチドメイン(CRD)、末端逆位反復配列(TIR)、TTAAモチーフを含む標的部位重複(TSD)を含む配列)を特定した。このフィルタリングにより、転座能があると推定される 116,216 個の PiggyBac 要素のデータセットが生成され、80% の配列同一性でクラスタリングした後、13,693 個の PiggyBac サブファミリーが生成された。
[#] 参考crisp_bio記事
- 2023-07-22 タンパク質生成AI:AIによるバイオ医薬品のデノボ設計.
- 2025-08-01更新 大規模言語モデルを介して, 広大なCRISPR-Cas Atlasを構築し, SpCas9を超える高機能な"OpenCRISPR-1"を生成.
[出典] "Discovery and protein language model-guided design of hyperactive transposases" Ivančić D [..] Güell M. Nat Biotechnol. 2025-10-02. https://doi.org/10.1038/s41587-025-02816-4 [所属] Integra Therapeutics (ES), Universitat Pompeu Fabra, Barcelona Institute of Science and Technology, ICREA (Institució Catalana de Recerca i Estudis Avançats)
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